マーケティング/マーケティング事例

なぜ“オヤジ”は新橋に集まるのか?(2ページ目)

サラリーマンを対象にしたテレビの街頭インタビューで、いつも目にするのは新橋のSL広場。なぜ“オヤジ”サラリーマンは新橋に集まるのか? マーケティングの観点からその謎を解き明かしていきます!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

街のコンセプトを明確に打ち出す“新橋”のマーケティング

街自体にコンセプトがあれば、同じような特徴を持つ人たちが集まってくる。
マーケティングとは簡単に言えば、『誰に?』『何を?』『どのようにして売るのか?』という仕組みを構築していくこと。まずファーストステップとして、誰に売るのかを決定する必要があります。このステップでは、STPと呼ばれるフレームワークを利用することになります。

Sとはセグメンテーションと呼ばれ、市場をいろいろな属性から細分化していきます。たとえば、新橋で営業する店舗の場合、年齢と職業、性別などによって市場を細分化していくことができるでしょう。

そして、セグメンテーションで市場を細分化した後はT、すなわちターゲティングを行わなければいけません。細分化した市場の中で最も売上を上げやすい顧客層にターゲットを絞るということです。新橋の場合は年齢と職業、および性別でセグメンテーションを行っていますから、ターゲティングは40代から50代のサラリーマンとすることもできるでしょう。

ターゲットが定まれば次はP、いわゆるポジショニングとなります。どのようなポジションで事業を行うかを決定するというわけです。もちろん、同じ40代から50代のサラリーマンをターゲットにしても、新橋はお隣の銀座などと違って高級路線というよりは懐の寂しい“オヤジ”サラリーマンの味方という大衆路線のポジションに位置して差別化を図っています。

このようにしてSTPを通じて、「誰に売るのか?」を決定すれば、そのお店には狙った顧客層が多く集まるようになります。通常1つの店舗だけでなく、街全体を同じコンセプトでSTPを行えば、その街には同じような特徴を持った人が数多く集まるようになります。

たとえば、渋谷のコンセプトは、若者の街として、それに相応しいショップが多く軒を連ねて、若者を魅了してやまないですね。銀座は高級というイメージを前面に押し出して、ブランドショップなどが数多く出店され、男女問わずセレブが集う街として有名です。

これと同じように、新橋は「懐にやさしい赤提灯の街」をコンセプトに、“オヤジ”サラリーマンが最も居心地のいい街としてターゲット顧客層にアピールしているというわけです。“類は友を呼ぶ”という諺もありますが、将に街自体は同じ特徴を持った人が友人を巻き込んで、同じような人が街に溢れるということになります。

このようにして、“オヤジ”サラリーマンにとって、共感を持てる多くの同志が集い、心を最も落ち着つかせる場所として一番に頭に思うかべるのが新橋であり、それゆえついつい足を運びたくなるという魅力を新橋は持っているのです。


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