質疑応答が苦手な人は多い

会議や企画提案などで行われるフォーマルプレゼンテーションの際に、重要な位置づけにあるのが質疑応答。プレゼンテーションがうまくいったとしても、質疑応答で失敗してしまっては効果も半減です。

私のプレゼン研修受講者のなかでも、この質疑応答を苦手としている方は少なからずいらっしゃいます。実際、難易度が高いものであることは間違いありません。今回はそんな質疑応答にうまく対応する方法をお話ししていきたいと思います。

なぜ質疑応答は難しいのか?

質疑応答は即興性が高く、だからこそ難しさを感じてしまう
多くの人が質疑応答を苦手とするのはなぜでしょうか? それは、質疑応答には即興性があるからです。いわゆるプレゼンテーションは事前に話す内容を練り、十分にリハーサルをしてから本番を迎えることができます。不安があるならば、入念に準備をすればよいのです。

しかし、質疑応答においてはそれができない。投げかけられた質問に対して、その場ですぐに答えなければならない。この即興性こそが、質疑応答を難しくしている原因です。

――と、このように一般的には思われていますが、それは本当でしょうか? 上で述べた内容を少し疑ってみることで、実は質疑応答をうまくこなすコツが見えてきます。質疑応答は、確かに即興の要素が強く、その分難しいのは事実です。しかし、2つの意味で、完全な即興プレゼンでもありません。それは、どういう意味でしょうか?

質疑応答でも準備やリハーサルはできる

質疑応答が苦手は人は「質疑応答は、どんな質問が来るかわからないから、事前に答えを用意しておくことなんてできない」と考えてしまいがち。しかし、そんなことはありません。対応策は、想定問答を考えておくことです。

あなたのプレゼンを聞いた後に、聴衆からどんな質問が来そうかは、あなた自身もある程度予想できるはず。その質問への答えを事前に用意しておけばいいのです。実際の質疑の際で出た質問がドンピシャでなくても、事前に準備した回答の一部(もしくは全部)をアレンジすれば答えられるものが多いでしょう。

どんな質問が来そうか予想もできないならば、身近な誰かにプレゼンを聞いてもらって、どんな質問がしたくなるかを尋ねてみるとよいでしょう。

「想定問答を考えておく」と口で言うのは簡単ですが、実際に行おうとすると、かなり面倒くさく感じるものです。なぜかというと、せっかく考えた想定問答も、その通りに質問が来るという保証が全くないから。しかし、準備すれば確実に質問への回答の精度が高まります。だまされたと思って、一度やってみてください。

質問を受けてすぐに答えなくても良い

質問を受けてすぐに答えなくても良い、表現を変えれば「考える時間がもらえる」のならば、質疑応答の難易度もだいぶ下がるのではないでしょうか?

真面目な人ほど「質疑応答では、質問されたらすぐに答えなくてはならない」と思ってしまいがち。ですが、質疑応答がうまい人ほど、そんな風には考えません。

ポイントは「数秒の時間確保」です。この数秒の考える時間をとれるのかどうかで、返答の質は大きく変わってきます。そのための2つの方法をお伝えしましょう。

質問を繰り返す

質疑応答のときでも、質問者以外の聴衆のことを忘れないようにしよう
1つめの方法は、時間稼ぎをすること。たとえば「今、こちらの方から○○というご質問をいただいたわけですが」などと、聞き手の言葉を繰り返す。もしくは「いまご質問いただいたのは、○○が知りたいという意味でよろしいでしょうか?」と、質問を咀嚼して返す。

こうした言葉を話している数秒の間に、頭をフル回転させて回答を考えるのです。稼げる時間は長くて20秒程度ですが、20秒もあると結構考えはまとまるもの。

ちなみに、質問の繰り返しや質問の咀嚼には、時間稼ぎ以外にも大きな意味があります。それは、質問者以外の聴衆に対する気遣いができるということです。質疑応答の時間は、どうしても質問者と話し手のやりとりになりやすい。だからこそ、その時間に質問者以外の聴衆が「自分はいま蚊帳の外だな」と感じてしまわないように気遣いが必要なのです。

質問の繰り返しや質問の咀嚼を行うことで、その気遣いを見せることができます。つまり、質問の繰り返しや咀嚼は質問者にだけ向けたメッセージではなく、聴衆全員に対して「この方は、みなさんを代表して○○ということを聞いてくださいました。私はみなさん全員に、それに対する答えをお伝えします」と伝えているのです。

正直に「すぐに答えられない」と話す

2つめの方法は、正直に「すぐに答えられないので、少し考える時間が欲しい」と言うことです。もちろん、何分も待ってもらうわけではありません。それでは間がもたない。ほんの少し、考える時間をもらうのです。

このように言うと「すぐに答えられないなんて言ったら、専門性を疑われて信頼を失うのではないか?」と感じるかもしれません。そこは当然、そうならないようにうまく表現する必要があります。

具体的には「私がよくわかっていないので、すぐには答えられない」のではなく、「あなたの質問が深く鋭いので、私としても考えて答えたい」というアプローチで持っていくのです。

実際、想定問答をしっかり準備していたにも関わらず即答できないとすれば、その質問は深く鋭い質問であるはず。もしくは、思ってもみない観点からの質問でしょう。だとすれば、それにすぐ答えられないあなたが未熟なのではなく、そうした質問をする質問者が鋭いのです。

その事実を伝えるのは、質問者に対する敬意の表れでもあります。伝えたことで聞き手も喜ぶのであれば、そうしない理由もありません。たとえば「なるほど、非常に鋭い観点からのご質問ありがとうございます。とても本質的な質問なので、私も慎重にお答えしたいと思います。少しだけ考えをまとめさせてください」などと伝えれば、信頼を落とすこともないでしょう。

ただし、想定質問も準備せず、そのせいで簡単な質問にすら答えられなかったときにこの方法を用いて「鋭い質問ですね」と言っても、それは機能しません。表面だけ繕っても、聞き手はあなたの準備不足を見破ってしまいます。

質疑応答で聞き手の信頼度アップ

さて、ここまで質疑応答で失敗しないコツについてお話してきました。「想定問答を考えるとか、意外とやることが多くて大変だ」と思われた人もいらっしゃるかもしれません。しかしそれだけの価値があるのが質疑応答です。

聞き手からしてみれば、質疑応答はやはり即興のもの。準備されたプレゼンテーション以上に、あなたの実力が試されると思っています。だから、質疑応答にうまく対処すれば、聞き手からの信頼度は大きくアップするのです。聞き手の信頼を勝ち得るために、鍛えてみてください。