キャリアの能力開発とは?
<目次>
能力とは行動習慣です。まず新しい行動を始め、習慣化・定着化できた状態を能力といい、能力開発とはこの一連のプロセスに他なりません。まずはスタートすること。継続していけば結果的に能力になるのです。
キャリアを開発する前提として、能力を開発することが必要です。専門的な能力を身に付けることと同様に、基礎的な能力をきちんと確立することも同時に求められるのです。
基礎能力の構成要素
能力には、どのような要素があるか見てみましょう。コンピューターのソフトウェアを例に説明します。ソフトウェアの構造は、大きく2つに分かれます。下に位置する OS(基礎能力)の部分と、上に搭載されるアプリケーション(専門能力)の部分があります。実際に人が利用する部分はアプリで、OSは見えにくい。人間の能力もこのように、OSとアプリケーションで成り立っています。基礎能力で必要な能力は「概念化能力」です。概念化能力とは、具体的な戦略や行動を絵としてイメージする能力。自分自身の価値観をもとに、ビジョンを描き、そこに辿り着くための道筋、つまり戦略を策定し行動に移す能力です。自律的にキャリアを形成するには欠かせないもので、キャリアデザインをする際に最も注力すべき能力です。
次に必要な能力は、人を巻き込んでいく「人間的な魅力」で、リーダーシップやマネジメント能力と考えて下さい。いくらビジョンや戦略が明確になっていても1人では限界があり、周りの人たちからのサポートが必要。「あの人のためならついて行きたい」「あの人を支援したい」と人に思わせるかどうかが大事です。
それ以外には、情報収集、プレゼンテーション、異文化適応、時間管理能力などが挙げられます。
基礎能力は、どの会社でも適用できる能力です。専門能力は、劇的な技術革新があった際に陳腐化してしまうリスクがあります。コンピュータ言語の変遷などを考えればわかりやすいでしょう。大転職社会と言われる昨今、基礎能力は汎用性あるスキルで普遍的なものですので、陳腐化もしないのです。
基礎能力と専門能力のバランス
あなたはどの象限にタイプ分けされますか? |
■第1象限(右上)
「会社の財産」タイプ。両方とも兼ね備えている逸材の人です。感覚値ですが、このゾーンに位置する人は全体の10%未満でしょう。
■第2象限(左上)
「頭でっかち」タイプ。基礎的な部分が弱く、専門的な部分が強い人材です。実はこのゾーンは若手ビジネスパーソンを中心に増殖傾向にあり、全体の60%以上を占めます。
■第3象限(左下)
「会社のお荷物」タイプ。OSとアプリ両方ともに不足しています。こちらは20%程度です。
■第4象限(右下)
「ダイヤモンドの原石」タイプ。ここは基礎的な部分はできているが、まだまだ経験が足りない新入社員のイメージです。そのゾーンには10%程度でしょう。
専門能力だけではキャリア開発できない
能力開発は、成果がすぐに表れるアプリの部分を取り組む方が手っ取り速いですね。実はそこに落とし穴があるのです。上のマトリックスにあるように、最近では「頭でっかち」タイプが多くなっています。確かに、専門能力開発は成果が見えやすいので着手しやすい。例えば、TOEICのスコアを上げるとか資格試験を取得するなども、専門能力にあたります。
アスリートの世界で見てみましょう。専門能力にあたるのは筋肉です。良い筋肉は、日ごろの基礎的な反復トレーニングから形成されます。専門能力にあたるのが、種目に沿ったものやより高度な技術的なもの。この2つの能力があるから、成果である記録を生み出すことができるのです。
このような構造をイメージすると、専門能力だけではなく基礎能力も強化する必要がわかるでしょう。これをガイドは「ビジネス基礎力」と言っています。昨今、経済産業省では「社会人基礎力」と言っています。社会人基礎力は、大学などの学校では課外活動から形成されます。課外活動とは、ゼミナールや体育会、サークルなどの組織活動です。
毎年、大手シンクタンクが社会人として求められる能力をアンケートします。いつも1位になるのが、コミュニケーション能力。これは個人のみでは獲得できず、集団の中で形成される能力です。その意味でも、課外活動は非常に重要なものであることが理解できるでしょう。
社会人である皆さんは、会社以外のインフォーマルな組織に参加し、何らかの役割を担うといいでしょう。当事者意識は、能力開発をする上での重要な要素。異業種交流会などにただ参加するのではなく、何らかの役割を果たすことが能力や人脈を形成するポイントになります。
基礎能力の開発方法
では、どうすれば基礎能力を確立できるか考えてみましょう。基礎能力は専門能力と違い、一日にして成らずです。キャリアデザイン並びに能力開発の具体的なイメージを描き、その実現に向けアクションプランを策定し、決めたことは強い意思を持って日々淡々とこなしていくことに尽きます。目の前の結果に左右される必要はありません。明確なイメージができれば、会社から提供されるものを行うこと以外に、主体的に能力開発を図ることができます。結果として、目的を持って生きることができ、不用なものは捨てることができるようになります。
ガイドはビジネス基礎能力の測定をしているなかで、キャリアデザインや能力開発を意識して主体的に仕事をしている人は、情報収集能力や時間管理能力において、飛躍的に得点が高くなる傾向を見つけました。1日単位でも時間の使い方がうまいので、1週間、1ヶ月、1年、3年、5年、10年と蓄積されると、圧倒的な差となって現れます。
能力開発の原点は職場にあります。目的を持って仕事をすると、色々な新しい発見があります。様々な案件が飛び交う職場こそが、能力開発の近道であることを肝に銘じて下さい。高いアンテナを張り自らの五感を駆使して、日常業務を革新的に遂行して下さい。
大企業に勤務している人は教育研修制度が充実していて、階層別研修や目的別研修など、会社から様々な研修プログラムが提供されています。非常に良い環境に置かれているのに、有効活用されている社員は全体の2割程度ではないでしょうか。せっかく与えられた機会なので、好き嫌いにかかわらず戦略的に教育研修プログラムを活用して下さい。
これからは会社に依存することなく、自分のビジョンや目的を踏まえ主体的に能力開発をすることが必要。そういう意味では、外資系に勤務している人は、自ら選択して主体的に能力開発に励む人が多いと感じます。契約社会である外資系社員は自らを商品として捉え、どうすれば、市場で高く売れるかを常に考えているからです。オープンマーケットでの市場価値ということを、念頭に入れ能力開発をしています。
きっかけは「ありたい目標の姿」と「危機意識」
みなさんは年1回の定期健康診断を受けますね。正常値の場合、特に生活習慣を変える必要はありませんが、評価が悪かった場合や要検査ということであれば、「やばい!」と思います。そこで何らかの生活習慣を変えていきます。まさにこの一連の行動こそが能力開発のプロセスなのです。例えば、 1年で5キロも肥満化し、中性脂肪やコレステロール値、血糖値が標準値を越えた時、通常は何らかの行動を変えようと考えます。体重を落とすために、有酸素系の運動をしたり、筋肉をつけたり、野菜を多く摂るなど、食事内容や時間帯を早くするなど、生活習慣を改めます。
能力を開発にはきっかけが必要です。危機意識を持つことで、新たな行動を起こすようになるのです。
また、技(スキル)を獲得する前提として、心(マインド)が重要です。心とは志(ビジョン)です。自分がこうありたい、こうしたいという強い信念や理想が、能力獲得への推進力となります。
行動の継続は年間の自己啓発テーマを決めること
仕事の目標以外にも、自分で年間の自己啓発テーマを決めることをお薦めします。年間を通じてのテーマを決め、そのテーマに即した文献購読など、自己啓発活動をするといいでしょう。週1冊としても年間で約50冊になります。50冊読めば、そのテーマについてのエキスパートになります。例えば、環境、教育、年金、雇用、憲法、世界、日本、アメリカ、中国など、自分の興味あるテーマを設定すればいいのです。それらを自分の血肉に変えるには、そのテーマについての情報発信をすることをお薦めします。ちなみに、ガイドの年間テーマは「リーダーシップ」です。
ネット世界では無料で情報発信ができるので、出し惜しみなくブログやメルマガなどの媒体を利用し、週1回程度発信することはいかがでしょう。例えば、メルマガを発行1年後に1000名の読者を獲得するという目標を設定するなどが考えられます。
メルマガを発行することは1人編集長のようなもので、統合的な能力が必要です。企画力、マーケティング力、文章表現力、論理的思考力など、様々な能力が獲得できます。能力開発する上でも合理的と言えます。
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