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30歳からの成長戦略を学ぶ【3】(5ページ目)

山本真司さんに学ぶ「30歳からの成長戦略」、第3回目は、“現在の自分”をどうやって変えていけばよいのか。どうすれば成長軌道へシフトできるのか。そこのところへ細やかなアドバイスを沢山いただきました。

執筆者:塚田 祐子

心のマネジメント

最後にお話しておきたいのが、「経営者人材」になるための3つ目の要件です。経営者には、組織のリーダーとして、人をリードする力、人を動かす力、カリスマ性などが求められます。

リーダーシップやカリスマ性は、それらを追いかけて身につけられるものではありません。結局、人がついてきてくれるかどうか、最終的にはリーダーの人間性がものを言います。したがって、リーダーたる者は、心を正しい方向にマネジメントすることが必要となります。

■経営者人材になるための3つの要件
1.ビジネススキル
2.矛盾をマネジメントする力(レゾナンス思考法)
3.自分の心のマネジメント能力

自分の心をマネジメントするための、最大の課題は何か。それは「」、すなわち自分の「エゴ」のマネジメントです。「欲」のない経営者では会社は伸びません。さりとて「我欲」に駆られた経営者にも、人はついてきません。

私の経験をお話します。30代前半の私のビジョンは、“超一流のコンサルタントとして成功”することでした。そして、十分な金銭的な報酬を得て、前の職場の同僚やビジネス・スクールの同級生に圧倒的な差をつけた成功者になることでした。今流に言えば、勝ち組のトップに躍り出ることです。

ビジョンは“超一流の己”作り。これは申し分ないのですが、そこにある本音は、他人のことより自分、自分が勝って成功者になること、というものでした。そして、我欲の成就が、私を突き動かすドライバーでした。

最近、若手の皆さんと話しをすると、あの頃の私を連想させる人にたくさん出会います。負け組編入恐怖症が「我欲の追求」というドライバーを生み出しているように思えます。そういう若者がどうなってしまうのかを占うためにも、私がこの時代に“得たもの”と“失ったもの”をお見せすることにします。

■良い成果物
・論理系のビジネススキルの修得
・論理系のビジネスナレッジ
・自己主張能力

■悪い成果物
・自我の暴走 (自己主張が激しくなる。)
・他者との衝突 (他人の感情に配慮を欠く。)
・創造力の喪失 (頭が論理系で凝り固まって、柔軟性を失う。)
・バーンアウト症状 (努力をしても、残るは疲労感。)
・ディフェンシブな仕事姿勢 (行動がどんどん守りに入る。)
・ネガティブ思考 (言い訳をして自分を正当化。)

ここをスタートに、悩んで試行錯誤を繰り返して、次のような成長過程をたどりました。

■心のマネジメント~四つの段階
1.「欲」をエネルギーに猪突猛進 (←30代前半の私)
2.「欲」プラス「他者の感情のマネジメント」の実践 (←“技術論”の試行錯誤)
3.「無欲」への挑戦      (←“マインド”の試行錯誤)
4.「欲」と「無欲」を併せのむ (←現在の私)

現在の私は、自分を対象にした「欲」には、あまり関心がなくなっています。その代わり、「欲」の対象が自分以外の他者に向いています。格好よく言えば、“他者を幸福にしたいという「欲」”が生まれつつあります。顧客、同僚、上司、ビジネス・パートナー、そんな他者に成功してもらうために、そこに少しでも自分が役に立ったという実感が得られれば満足です。

自分の利害を捨てて、他者の利害を優先する。自分のために能力を伸ばすのではなく、他者のために能力を伸ばす。自分は世界の構成要素の一人であること、一人の力でしかないこと。そして自分を取り巻く大きな流れがあって、そうした流れに身をゆだねること。自分のエゴが強かった昔は、そんな流れに対して、自分が大きな障害物になっていたように感じます。

気がつくと、なぜこんなことが10年間もの間分からなかったのかと思います。考えてみると、最後に捨てつつあるもの。それは自分です。「戦略とは捨てること」とは名言であり、本質的で力のある言葉だと思います。

無欲のステージまで、すなわち第4段階まで、最初から至ることができるかどうか、このプロセスに10年以上もかかった私には分かりません。私の体験からいえば、自分の欲から入り、悩んで否定し、そして統合し、最後に「利他」に気がつくという進化過程は、誰も避けることができないプロセスなのではないかと思います。

私自身は、こういう進化体験をもっともっと早くから勉強しておくべきだったと思います。知らずにいたため、ぶつかりながら時間をかけて学びました。また、知らずに一生を終えてしまう人もいるでしょう。こういう進化があるということを、頭の隅に置いたうえで日々努力すること。そんなことが、若い皆さんを本当に強くするのではないかと思います。是非、意識して進化を加速させる人になってほしいと思います。

以上、“変わる”ためのヒントをいろいろお話しました。3回にわたってメッセージをお届けしました。それらを参考に、皆さんそれぞれの成長戦略を、自分の頭で考えていっていただきたいと願っています。

若い皆さんにとっては、色々な可能性がこの10年で大きく広がると思います。変化の時代は、新しいことにトライできる面白い時代でもあります。若きライバルたちが続々出現して、一緒に切磋琢磨できることを楽しみにしています。


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