コスモス社員の平均年収は890万円 募る退職希望者


まずは、コスモスイニシアの「ブランドステートメント(声名)」から、当該企業の原点を探ってみることにしましょう。2006年9月1日、リクルートコスモスからの社名変更に合わせ、同社では次のような声名を発表しています(以下、HPより転載)。


―【コスモスイニシアのブランドステートメント】――――――

 このステートメントは昭和49年の創業以来、長年にわたり培ってきた「すべての判断の軸をお客様に置き、住まいに関する様々なご要望に総合的にお応えしたい」という思いを継承しながら、さらに、企業活動を通じて「人々の快適な生活の場を創造していく」ことを使命に、「お客様の一歩先を行く安心」と「期待以上の喜び」を生涯に渡って提供し続ける ―― という決意を表しております。
 また、そのためにはお客様の気持ちを深く理解し、お客様のニーズを常に先回りして商品企画や事業・サービス展開等の具体的なソリューションを提供し続けることが必要であり、これらの企業活動の結果として、社会に対して常に「新基準を提示する企業グループ」として認められる存在になりたいという思いを込めております。

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「一歩先」「先回り」「新基準」と、常に時代をリードする新鋭企業でありたいという思いが、このステートメントからは感じ取れます。リクルートのDNA(遺伝子)を引き継いでいるだけあって、大手に見られる伝統や企業文化の系譜というよりは、価値創造や独自性といったクリエイティブな色彩が色濃く反映されています。

しかし、その決意や思いとは裏腹に、マンション不況の直撃を受けた同社は2009年、大幅な営業損益・当期純損失へと転落しました(下表参照)。今年2月、監査法人による「継続企業の前提に関する事項」に注記が付いたのは記憶に新しいところです。そして、その2カ月後の4月17日、当期純損失が900億円となることから530億円程度の債務超過になる見通しが判明し、前述した事業再生ADRの適用に踏み切ることとなりました。要は、単独での抜本的な再生を図ることが困難となったわけです。そして、事業再生計画案として3つの基本方針が示されました。


  1. 当社の強みである新築マンション・戸建て住宅販売事業、ならびに、投下資金が少なくて済む不動産仲介および賃貸事業に経営資源を集中し、投資用不動産事業からは撤退する(事業の選択と集中)。
  2. 強いビジネスモデルへ回帰するために住宅分譲事業の規模を縮小し、エリア特性を十分に見極めた事業展開を目指す。
  3. オフィスを集約し、また、人件費を見直すなど、コスト削減に努める。

3番目の人員削減(希望退職者の募集)に関しては、子会社のコスモスモアと合わせて360人の応募があったことを発表しています。両社の社員合計739人の約半数が退職することになったのです。コスモスイニシアの従業員の平均年収は890万円(平均年齢37歳)と比較的高い水準であるため、年間約35億円の人件費が削減できる見込みです。

コスモスイニシアの企業業績の推移 (単位:百万円)

「大和ハウス工業」との二人三脚で再建を目指す


その後、8月28日には大和ハウス工業との資本提携や、主要金融機関による675億円の金融支援などを柱とする事業再生計画案を発表しました。大和ハウス工業がコスモスイニシアの優先株の一部を引き受ける形で出資し、マンションの共同開発などで業務提携するそうです。大和ハウス工業にとっては、コスモスイニシアが持つ都心部のマンション開発ノウハウを手に入れる狙いがあります。

そして、それからちょど1カ月後の9月28日、ようやく事業再生ADR手続きの成立に至りました。主要取引金融機関から370億円の債務免除と305億円の債務の株式化による金融支援を受けるほか、全取引金融機関から計1008億円の借入金の返済条件を緩和してもらうこととなりました。2010年3月期の当期利益が一転、254億円に黒字化しているのは、こうした債務免除益を特別利益に計上しているためです。決して業績の本格回復によるものではありません。それが証拠に、会社四季報では翌2011年に、再び赤字(15億円の純損益)に転じる予想を立てています(上表参照)。

こうして、何とか債務超過を解消することができたコスモスイニシア。はたして今後、自律回復できるかが気になります。再建計画では事業の選択と集中により、新築マンション分譲に専念するとしていますが、新築マンション市場は今もって停滞している最中にあって、楽観的な考えは禁物でしょう。

むしろ、大和ハウス工業と業務提携したのだから、市況が改善しつつある一戸建て住宅販売に本腰を入れたほうが、業績改善に寄与できるようにも思えます。事業再生ADR手続きの成立は、コスモスイニシアにとっての「リ・スタート」(再出発)に他なりません。このスタートラインから飛躍できるかどうかは、どこまで企業価値を向上させられるかにかかってくるでしょう。


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