ノーベル賞の田中耕一氏の場合
ノーベル賞メダル(白川英樹博士)のホログラフィ映像写真(ホログラムは東京工業大学所有)
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田中氏が日本の質量分析学会の年次会議で論文発表したときは、誰もが役に立つようになるとは信じなかった。 その後の日中質量分析シンポジウムで、米国のコッター教授に見出され、大阪大学の松尾教授の強い勧めで、英語版論文を投稿したことが今回の受賞につながったという。ノーベル化学賞選考委員会に認められたのである。これらはほんの一例だが、欧米と日本の研究姿勢の違い、評価の違いがみえる。欧米には、独創技術を育む科学技術風土が確実にあるようだ。
民族の持つ精神
農耕民族である日本人には「和の精神」が根付いている。周りとの協調を重んじる社会である。狩猟民族である欧米の「競争社会」とは方向が異なる。戦後、技術立国として日本が復興するには、この和の精神は大きく貢献した。物不足の時代、世の中は大量生産、大量消費へと向かった。日本の製造業には均一な労働力が必要とされたのである。チームワークを良しとし、体育会系出身が求められる風潮もあった。このため横並び意識がはびこり、義務教育はこの平均レベルを上げるのに貢献した。メイド・イン・ジャパンは高品質の代名詞となり、日本の製造業が強い競争力を維持することになる。そして国民総中流意識の時代が続くのである。
これは次ページのような状況を生んだ。