営業で商談のペースを作るには?
相手の思考の枠組みをリフレーミングさせる
「この価格では、うちの上司を納得させることは無理だよ。もう一度再検討してよ」
お客さんのこういう発言って、営業マンをやっているとイヤというぐらいに聞かされますよね。こんなとき、みなさんならどう対処しているのでしょうか。
多くの営業マンがやるのが、お客さんの主張に真っ向から反論することです。「この商品は●●と▲▲と■■の点で、他社商品よりも優れています。ですから決して高い価格設定をしているわけではありません」というように。いくら反論しても、ほとんどの場合は商談は平行線に終わってしまいます。下手をすると、対立ムードになってしまうことすらあります。
だからといって、「わかりました。再検討してみます」と、相手の要求を飲み込んでしまうと、ペースは完全にお客さん側のものに。では、どうすればいいのでしょうか。今回は、こんな場面でのとっておきの交渉術を紹介しましょう
それはリフレーミング法です。
上手に論点をずらし、こちらのペースに持っていく
リフレーミングとは、「それまで見ていた枠組みとは違う枠組みで物事を見直す」という意味です。たとえば大きな仕事を抱えているときに、「まだ半分しか終わっていないのか」と考えるとつらくなりますよね。けれども「もうあと半分だぞ」と思うと、かなり気持ちが楽になります。これがリフレーミング(おなじ物事を違う枠組みで見直す)という意味です。交渉術のリフレーミング法では、営業マンが働きかけて、お客さんの思考の枠組みをこちらのペースに持ち込めるようにリフレーミングさせます。具体例で示しましょう。
「この価格では、うちの上司を納得させることは無理だよ」と言ったお客さんの場合、相手が発した「上司」という言葉をキーワードにして、相手の思考の枠組みをリフレーミングさせます。
<会話例>
お客さん:「この価格では、うちの上司を納得させることは無理だよ。もう一度再検討してよ」
営業マン:「そうですよね。私もAさんがおっしゃるように、上司の方がキーマンになると思います。だからこそ私とAさんで一緒に上司の方を口説きましょうよ。Aさんの現場に対する問題意識と情熱があれば、きっと上司の方をうなずかせることは可能ですよ」
これは完全に論点をずらしています。お客さんは価格の再検討を要求しているのに、営業マンはまったく違う話を持ち出したわけですから。しかし、お客さん側からすると、あまりはぐらかされたように感じません。
お客さんの主張に対して、営業マンは「そうですよね。おっしゃるとおりです」と同意しています。お客さんとしては、何だか自分の主張が受け入れられたかのように感じます。さらに「だからこそ」と言われることで、自分の主張を実現したいのなら、営業マンの誘いに従った方がいいような気すらしてきます。
このように、相手が使った言葉(この場合は「上司」)をキーワードにしながら、相手に同意しつつ、こちらの都合の良いように議論の枠組みを変える。これがリフレーミング法というわけです。
人は「ロジック」よりも「言葉」に反応する
リフレーミング法は、さまざまな場面で活用可能です。いくつかの活用例を紹介しましょう。<会話例>
お客さん:「このまま価格のままでは厳しいよ、もう少し頑張ってよ」
営業マン:「もちろん頑張りますよ。ですから私も週1回は御社に伺って、一緒に販促策を考えさせていただきます」
<会話例>
お客さん:「うちも予算が厳しくて、あまり経費を使えないんですよね」
営業マン:「そうですよね。いまの時代、経費削減は至上命令ですからね。だからこそこのシステムで、経費削減を実現できます」
<会話例>
上司:「今度の4月から、新しい部署で働いてくれないか?」
部下:「私の力はいまの部署で必要とされています。できることならば異動したくはありません」
上司:「そのとおりだ。君の力を我が社は必要としている。だからこそ新天地でその力を発揮して欲しいんだ」
実際にやってみると実感しますが、リフレーミング法はかなり成功率が高いテクニックです。相手ははぐらかされているのに、はぐらかされていることに意外と気づきません。なぜなら人は、「ロジック」よりも「言葉」に反応しがちな生き物だからです。「おっしゃるとおりです。だからこそ」という言葉に弱いのです。たまに「それはあなた、論点のすり替えでしょう」と指摘してくる鋭い人もいますが、それはかなり少数派。
できる営業マンは、いつの間にかお客さんを口説くのが得意なものです。お客さんの主張に真っ向から対立せず、上手にかわしながらこちらのペースに持っていく。そんな営業マンになりたい人は、ぜひリフレーミング法をマスターしてください。
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