当てにならない舌

別の例を挙げてみよう。以前、あるテレビ番組で面白い実験をやっていた。「料理の鉄人」で有名な「和の鉄人」道場六三郎さんが作った料理と、番組スタッフ(一般の主婦だったかな?)が作った料理を食べ比べ、どちらがおいしいかを評定するという内容だった。

ただし、料理を出すときにひとつだけウソをつく。全く逆の説明をするのだ。つまり、道場六三郎さんが作った料理を「番組スタッフが作った料理です」と出し、番組スタッフが作った料理を「道場六三郎さんが作った料理です」と出すのである。その結果、料理を食べた全員が、番組スタッフが作った料理(道場六三郎さんが作ったと説明された料理)のほうがおいしいと評定したのである。

偉大な権威の前では、舌も当てにならないのだ。

セールスの現場では

「権威の力」は、セールスの現場でも応用されている。例えば、書籍のオビには「○○氏も絶賛!」いうコピーをよく見かける。商品カタログでは、その分野の専門家が商品の素晴らしさを解説している。また、トップセールスたちは、商品を肯定する専門家の記事を切り抜いて持ち歩いている。いずれも「私の話には、このように専門的な裏付けがあるんですよ」というメッセージを伝えるための作戦なのだ。

「人は権威に弱い」という原理を説得に応用すると、他人の承諾を得やすくなる。方法は簡単だ。その分野の専門家に、説得の内容を肯定する意見をもらい、それを相手に示せばいい。あるいは、説得の内容を肯定する専門家の話を知っているというだけでも構わない。それだけで、あなたも専門家と同様に扱われることになる。要は、「権威」による「裏付け」を示すことができればよいのだ。

私たちが新聞や書籍を読むときには、どんな内容かは覚えていても、どんな肩書きの人物が書いたのかは覚えていない。しかし、権威の力を借りたいのなら、これでは意味がない。「どんな肩書きの人物が書いた」のかが重要なのである。「○○大学の○○教授によれば…」このひとことがパワーを発揮するのだ。

→ 次は、悪意のある専門家について

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【連載】説得と交渉の営業心理学
第1回 二度目は断れない
第2回 拒否させて譲歩する
第3回 一面呈示と両面呈示
第4回 結論を言わない暗示的説得
第5回 手に入りにくいほど欲しくなる
第6回 他人の真似をする社会的証明
第7回 人を服従させる権威の力

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