なぜ買ってしまったのだろうか?

日曜の朝、新聞に折り込まれてきたチラシを見ていたAさんは、その日の11時からアンティーク家具の展示即売会があることを知った。イギリスのアンティーク家具が好きなAさんは、チラシに載っていたオークのブックケースがとても気に入った。ただ、値段がかなり高いため、気軽に買えるものではない。Aさんは、買う気はなかったが実物を見てみたいと思い、その日の夕方に展示即売会の会場へ向かった。

会場に着くと、Aさんは例のブックケースがどこにあるのかを店員に尋ねた。すると店員は、そのブックケースは5つしかなく、もうすでに4つは売約済みであること、残りの1つも何人かが購入を検討していることを教えてくれた。Aさんは、この機会を逃がしたら手に入れることができなくなると思い、実物もよく見ないまま、その場ですぐに購入を決めた。

Aさんは、欲しかったブックケースを手に入れることができたが、予定外の(かなりの額の)出費になってしまった。Aさんは、なぜよく考えずに購入してしまったのだろうか。

手に入りにくいほど欲しくなる

私たちは、手に入りにくいものほど貴重なものだと考える傾向がある。これを「希少性の原理」という。

私たちは、手に入れることが難しいものは、簡単に手に入る物よりも良いものだということを、経験的に知っている。だから、どのくらい手に入りにくいかを基準にして、その物の価値を判断することができる。ほとんどの場合、この経験則は正しく機能する。

また、入手が容易だったものが入手困難になるというのは、自由を失う(制限される)ということである。人は、既にもっている自由を失うことを極端に嫌う。そのため、失った自由を回復しようとして、以前よりずっと自由を求めるようになるのである。

最も興味深いのは、入手可能だったものが入手困難になると、その対象をより高く評価し、以前にも増して欲するようになることである。例えば、同じ商品でも、入手が困難になるだけでよい商品だと感じ、ますます欲しくなるわけである。

Aさんの場合も、5つのブックケースのうち4つが売れてしまい、入手が困難になったため、Aさんはブックケースを以前よりも高く評価するようになったのである。

数量や期間を限定して希少性を高める

広告やチラシで「生産終了のため50個限定」と数量を限定したり、「3日間限りの特別価格」と期間を限定したりするのは、入手の機会を制限し、意図的に希少性の原理を働かせることで、商品価値を高めるためである。

以前、「たまごっち」というおもちゃが大ブームになったことがある。どこのおもちゃ屋でも売り切れで、入荷時にはどうしても欲しい人が店の前に行列を作り、徹夜で並んだほどだ。

「たまごっち」がこれほどのブームになったのは、ただ単に面白いおもちゃだからではない。「どこに行っても売り切れ」という入手困難さが、商品の価値を高め「どうしても欲しい」と思わせたのだ。

→ 次は、希少性の効果を証明する実験結果と、セールスの現場での活用法について

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【連載】説得と交渉の営業心理学
第1回 二度目は断れない
第2回 拒否させて譲歩する
第3回 一面呈示と両面呈示
第4回 結論を言わない暗示的説得
第5回 手に入りにくいほど欲しくなる

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