営業のノウハウ/営業の商談・ヒアリング

【連載】説得と交渉の営業心理学 第1回 二度目は断れない

買う気はなかったのについ買ってしまった。そんな経験は誰にでもあるはず。人は一度何らかの要請を承諾すると、二度目の要請を断りにくくなる。その心のカラクリを解き明かそう。

執筆者:鹿俣 之信

あまり親しくない友人に1万円借りたいとき、あなたならどうお願いするだろうか。「1万円貸してほしい」と単純に依頼する?それとも・・・。

フット・イン・ザ・ドア・テクニック

相手の承諾を得たいとき、単純に要請するよりも、まず小さな要請をし、その後に大きな要請(本来の要求)をするほうが承諾を得やすいことが分かっている。このように段階的に要請を行う承諾誘導の手法をフット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)という。

人は一度何らかの要請を承諾すると、二度目の要請を断りにくくなる。そのため、はじめの小さな要請に応じると、その後の大きな要請にも応じやすくなるのだ。

買うつもりはなかったのに

たとえば、あなたがふらっと立ち寄った洋服屋に仕立てのいいスーツが飾ってあったとする。足を止めて眺めていると、店員が寄ってきて「ご試着してみませんか?」と言ってくる。「ちょっと見てただけですから」と断っても「きっとお似合いになりますよ」などと試着を促される。

何度も断るのも悪い気がして、試着だけならタダだからと、試着をしてみる。着てみると確かにイイ感じ。「思ったとおりよくお似合いですよ」なんて言われると悪い気はしない。その結果、買うつもりはなかったのにいつのまにか買ってしまった・・・ということになる。

一貫性のある行動をしたいという欲求

人は最初の要請に対しての選択は自由である。承諾することも拒否することもできる。しかし、最初の要請を承諾してしまうと、次の要請に対しては自由ではなくなる。最初の承諾に拘束されるのだ。

なぜ最初の承諾に拘束されるのだろうか。それは人が一貫性のある行動をしたいという欲求を持っているからだ。私たちの社会において、一貫していることは望ましく、一貫していないことは望ましくないと考えられている。

行動に一貫性がない(言っていることとやっていることが違うなど)と「よく分からない人」「信用できない人」「表裏のある人」だと見られてしまう。それに対して、行動に一貫性があると「知的な人」「誠実な人」「信頼できる人」と判断される。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックは、この一貫性の原理を利用している。最初の小さな要請を承諾して、その後の大きな要請を断ることは、「一貫性のない行動」だ。一貫性を保つには、大きな要請も承諾しなければならない。そのために「逆らいがたい強制力」を感じるのだ。

次のページでは、フット・イン・ザ・ドア・テクニックの効果を示す実験について紹介しよう → 次へ

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【連載】説得と交渉の営業心理学
第1回 二度目は断れない
第2回 拒否させて譲歩する

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