コーチング/人材育成・組織作り

口だけの部下を動かすコツ!上司だからこそ身につけたい対処法

仕事中、新しいやり方に論理明晰に反論する部下。部下の可能性を信じる上司だからこそ、枠を破ってもらいたいと願うのですが、説得しようとしても逆にやられるばかり。どうすれば、相手の可能性が開けてくるのでしょう?口だけ部下への対処法を紹介します。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

達者なのは口だけ、行動しない部下を上司はどう動かす?

口だけの部下を動かすコツとは

口だけの部下を動かすコツとは

新しいやり方に論理明晰に反論する部下。部下の可能性を信じる上司だからこそ、枠を破ってもらいたいと願うのですが、説得しようとしても逆にやられるばかり。こんな部下にはどうかかわれば、相手の可能性が開けてくるのでしょう?
   

問題点の指摘ばかりの部下

理屈の立つ部下にジリジリしていませんか?

理屈の立つ部下にジリジリしていませんか?

ある銀行の営業課長のAさんは、ある部下・Bさんに手を焼いていました。といっても、Bさんが怠け者というわけではありません。与えられた目標はこなし、そこそこの営業成績は上げています。しかし、何か物足りないのです。

入社5年目でそろそろチーム全体を引っ張ってもらおうと、Aさんとしては期待しているにもかかわらず、どちらかというとチームの士気を下げているのです。

たとえば、会議でAさんが新しいやり方を提案しても、すかさずBさんが理路整然とそのやり方の問題点を指摘し、「もう少し考えてからにしよう」という結論になることがほとんどです。

イライラしたAさんが、Bさんに「○○くんはどうしたらいいと思う?」と質問を投げかけても、最初は「たとえば、□□なんかもいいと思いますが……」と最初は答えます。しかしすぐに、「でも、これに関してもいろいろと問題点が考えられるので、もう少し考えてから」というように、結局は何も決まらずに終わってしまいます。

かといっても、Bさんに議論を挑んでも、きれいにかわされてしまいます。さて、Aさんはどうしたらいいんでしょうか?
 

「人」に注目すると見える解決法

口は達者だけれでも、実際にはなかなか行動しない部下。

さて、あなた自身もこんな部下を持って悩んでいませんか? もしくは同僚、上司、さらにはお客さんにも見当たるかもしれません。あなたはどんな対応をしているでしょう?

こんなBさんのような人に議論を挑んでも、次から次へと問題点、懸案事項が持ち出され、あなた自身が最後に疲れて終わってしまうことがほとんどです。

実はこんな人に対しては、話している「事」は尊重しつつも、そこにばかり意識を向けないことがポイントです。話している「事」だけではなく、眼の前の「人」に意識を向けるのです。

話している相手は何を考えているのだろう?
何を大切にしているのだろう?
相手のエネルギーレベルは高いだろうか? 低いだろうか?
相手は心から話しているのだろうか? 頭から話しているだろうか?

このように、相手という「人」に好奇心を向けつつ、話されている言葉や論理ではなく、伝わってくる雰囲気というかエネルギーに意識を向けるのです。いわば、言葉ではない「空気」を読むのです。すると、相手が心の奥から話しているときと、表面的に頭だけで話しているときの区別がつくようになってきます。
 

部下ではなく“サボタージュ”が話している!

部下の「サボタージュ」の声を逃すな!

部下の「サボタージュ」の声を逃すな!

こうやって「人」のエネルギー、空気に注目していると、相手が淡々とまるで機械のように話しているときに気がつくでしょう。それは、本来の相手の姿よりも小さくなっているように思えるかもしれません。

こんなとき、コーチングでは、本来の相手が話しているのではなく、相手の「サボタージュ」が話していると考えます。「サボタージュ」とは変化を恐れる自己制限的な思考のこと。

たとえば、あなたが何か新しいことをやろうとするとき、あなたの心の中で「やめといたほうがいいんじゃない?」「もし失敗して笑われたらどうするんだ?」といった内なる声を聴いていませんか? そういったものがサボタージュです。

サボタージュは誰にでもいるもので、それ自体が悪いものではありません。われわれをリスクから守ろうとしているのです。しかし、新しいことをやるとき、もしくはこれまで行っていたことをやめるときなど、何か新しい変化を創り出すときにはリスクはつきものです。このサボタージュの声ばかりを聴いていたら、われわれのエネルギーは止まり、士気は高まらず、新しいことに踏み出せないのです。

こうならないように、必要なのは、相手の本来の声とサボタージュの声を切り分けること

「こんなことをしたい」という相手が持っているエネルギーが動き出しているときと、「もし失敗したらどうするんだよ」などという不安からエネルギーが止まっているときとを聴きわけ、それが混ざらないようにするのです。
 

アクセルとブレーキを使い分ける

たとえば、「Bさんはどうしたい?」と質問して、「こんなことをしたい」とBさんが語りだしてエネルギーが動きだしたのにもかかわらず、「とはいえ……」とエネルギーが止まり始めたとき、そこですかさず中断して、「そのことはいったん脇におけたら、どうしたい?」と相手のエネルギーが動く方向に聴いていくのです。

また、「とはいえ……」とか「でも……」と不安からエネルギーを止めるサボタージュが出てきている場合は、中断せずに、そのサボタージュの声をクッキリと明確にするのも一つの方法です。「とはいえ……」「でも……」という相手の言葉を繰り返すなど、その声を増幅していくのです。

こうやって、相手の本来の声とサボタージュの声を聴きわけて明確にすることで、相手はサボタージュの声に巻き込まれずに、本来持っているエネルギーをより発揮できるようになっていきます。

クルマの運転にたとえれば、相手の本来の声がアクセルであり、サボタージュの声がブレーキのようなものです。多くの人が、その2つの区別がつかずにゴチャゴチャしたまま、アクセルとブレーキを同時に踏みながら生きています。エネルギーは使いながらも、ほとんど前に進んでいません。

まずはブレーキを踏まずにアクセルだけを踏んでもらいましょう。ある人はそのおもいがけない速さに驚いてブレーキを踏みたくなるかもしれません。もちろんそれもいいでしょう。ただし、そのときはアクセルとブレーキを同時に踏む愚は避けてほしいものです。

そして、ブレーキとアクセルを使い分けるうちに、だんだんとブレーキを踏まずにアクセル全開に慣れ、ワクワクドキドキしながらも、自らの可能性をフルに発揮する人生を歩み始めるのです。

【参考書籍】
■『Co-Active Coaching: New Skills for Coaching People Toward Success in Work And Life』(written by Laura Whitworth, Karen Kimsey-House, Henry Kimsey-House and Phillip Sandahl Davies-Black Publishing)

■『コーチング・バイブル』(ローラ ウィットワース/フィル サンダール/ヘンリー キムジーハウス著 CTIジャパン訳 東洋経済新報社)

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