「できる」世界をしっかり見てもらおう!
どんな部下にも「できる」世界はある! |
現実に向き合ってもらうという点は同じですが、「できない」世界よりも「できる世界」を見てもらうほうが元気が出やすく、やりやすいかもしれません。
ただし、「難しい」「できません」と言っている部下に対して、「できる」部分に焦点を当ててもらう必要があるので、そのための特別な質問が必要になります。それを一つ紹介しましょう。
「もし、少しでもできているところがあるとしたら何だろう?」
この質問のポイントは、2つ。1つは「もし……としたら?」という仮定の形で質問している点、もう1つは「少しでもできているところ」と敷居を低くしている点です。
単純に「できているところは何ですか?」と質問しても、「難しい」「できません」と繰り返す部下からは、「そんなところありません」と返されるのがオチです。だからこそ、仮定の形と「少しでも」と敷居を低くするという2つの技で答えやすくする必要があるのです。
とはいえ、この質問で尋ねても「できているところなんてありません」と答える部下もいるでしょう。そんなときは、諦めずに「もし、ほんのちょっと、ほんのほんの少しでもあるとしたら?」と質問していけば、何か1つでも具体的なものが出てくるはずです。もし、それでも「できない」ことにこだわるのであれば、最初に挙げた方法に基づいて、「できない」ところを具体的にしてもらいましょう。
現実に向き合えば、部下は自ら答えを見つける
「できる」部分にしろ、「できない」部分にしろ、それを具体的にしっかりと把握すれば、逆の部分、つまり「できない」部分、「できる」部分も明確になってきます。大事なのは、相手を叱る、ほめるといった形ではなく、どれだけ部下が現実と向き合えるかどうか、です。天狗になって鼻が高くなっているのも、自信をなくして落ち込んでいるのも、しっかりと現実に向き合っていないという点では同じ穴のムジナです。
上司としては、有頂天になっている部下の鼻はへし折りたくなり、落ち込んでいる部下は励ましたくなるかもしれませんが、現実と向き合ってもらうという真の課題を忘れないようにしましょう。
自信を持てない部下にも、自信過剰な部下にも、「できる」部分、「できない」部分の両方が必ずあります。「特に難しいところは?」「できないところを具体的にいうと?」「もし、少しでもできるところがあるとしたら?」(自信過剰の部下には、「もし、少しでもできていないところがあるとしたら?」)と質問していきましょう。
しっかりと現実に向き合ったとき、部下は自ら、自分が次にやるべき行動を見つけます。コーチングの礎の一つである「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」を、あなたは実感するでしょう。
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