「……と俺は思う」と付けてみる
「これまで言った言葉の最後に、と俺は思う、と付けてみて言ってみてよ」
山田さんはこう言いました。怪訝に思いながらも古川さんは、「と俺は思う」と付け加えながら、言い直してみました。
「そもそも、カッコつけすぎているんだよ、と俺は思う」
「あれじゃ、お客さんからも若手からも信頼されないよ、と俺は思う」
「俺に怒鳴られたからって、ふてくされているようじゃダメだよ、と俺は思う」
言っているうちに、古川さんは「そうなんだ。俺はとにかくこう思っているんだ」と腹が据わるような感覚になってきました。自信を持って言っている自分がいました。
すると、山田さんがふっと質問してきました。
「お前はそう思っている一方で、お前の部下はどう思っているんだろうね?」
自分を尊重すれば、相手も尊重できる
「あいつはどう思っているんだろう?」
山田さんの質問に、自然と相手の立場に立って考えようとしている古川さんがいました。
無理に相手の立場に立とうというのではなく、「俺はこう思っているけれど、相手はどう思っているんだろう?」という自然な好奇心が出てきたのです。
上司が相手、部下の立場に立つことはとても重要です。そうしなければ、本当には部下の気持ちはわかりませんし、部下と本当に力を合わせて仕事をしていくことはできないでしょう。
しかし、「相手の立場に立つべき」「相手の立場に立たなければ」と思っても、実際にはなかなか相手の立場に立てません。
まず必要なのは、しっかりと自分の立場に立つこと。
自分がどう思っているのか、どう感じてるのか、どう考えているのか。「私は……と思っている」「私は……と感じている」「私は……と考えている」と遠慮せずに、口に出してみることです。
もちろん、部下に直接言っても構いませんが、相手が引いてしまう可能性もあります。まずは、独り言で言ってみたり、誰か信頼できる同僚や友人に聴き手になってもらいましょう。
そして、どうしても伝えたいことは、「私は……と思う」というカタチを守って、相手に伝えましょう。あなたが正直に思いを伝えることを受け止めてくれる部下は多いはずです。
相手の立場に立つ方法。それは、まず、自分の立場を尊重することです。
あなたが「自分という立場」を徹底的に尊重したときに、あなたは相手自身の「自分という立場」を尊重することができるようになります。
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