先月の記事「コーチング本を選ぶ3つの視点」を読んでいただいたみなさん。お待たせしました。私・宇都出雅巳が独断と偏見で選ばせてもらったコーチング本・ベスト5の発表です。『週刊アスキー』(7/5発売号)の「ランキング帝国」との連動企画ですので、そちらもあわせてご覧ください。

それでは、さっそく第5位から発表します!

第5位:『コーチング――言葉と信念の魔術』

現在、中日ドラゴンズ監督として実践中
この本の著者は昨シーズンから中日ドラゴンズの監督に就任した落合博満氏。就任1年目にしてリーグ優勝を達成、今年も連覇を狙える位置につけています。そのマネジメントの秘密を知ることができる本です。

実は、本書については、すでに「現有戦力を徹底活用した中日・落合監督に学ぶ――優勝に導いた「俺流」コーチング」として記事に取りあげています。そちらで本書の一部を引用していますが、自らの選手体験、コーチ体験に基にした、ズバリとコーチングの本質を突いた言葉が並んでいます。これが、「コーチング」という言葉がまだ一般的でなかった4年前に書かれた本ということにも驚かされます。いくつか、気になる言葉を引用しましょう。

「あくまでも主体は選手。相手の感覚でしか物事は進められない」

まさしく、部下ならぬ選手を“ヒト”としてとらえた言葉です。

「先入観は捨てられないもの。だからこそ先入観であることを自覚せよ」

これもなかなか含蓄が深い言葉です。コーチングにおいては部下を未知の存在としてとらえ、わかったつもりにならないことが重要です。とはいえ、全く白紙の状態で部下を見ることは簡単ではありません。だからこそ、自分が持っている思い込みや先入観を自覚して、常に自分を振り返ることが大切なのです。コーチングを実践している人ならではの言葉ですね。

野球の好きな人は、この本を片手に落合監督の選手への接し方、言動などに注意すると、コーチングを楽しみながら学ぶことができるでしょう。

第4位:『心で勝つ! 集中の科学――新インナーゲーム』

30年以上前に生まれたコーチングの源流
本書は改訂版ですが、最初の本は今から30年以上前にアメリカで出版され、日本でもその4年後には翻訳出版されたコーチングの古典です。著者はもともとテニスのコーチだったW.T.ガルウェイ氏

ガルウェイ氏はそれまでの技術指導中心だったテニスのコーチングの常識をくつがえしました。「こうしろ・ああしろ」といった指導をやめて、ただ観察することの重要性を発見したのです。その考え方については、「コーチングの基本を知ろう!」シリーズの1回目で「教えるコーチ・教えないコーチ」 として記事に取り上げました。

ガルウェイ氏は、テニスプレイヤーが対戦相手と行っているゲーム(アウターゲーム)ではなく、プレイヤーの内面で起こっているゲーム(インナーゲーム)に注目しました。プレイヤーの内面には、自分自身に対して「ボールから目を離すな!」とか、「ヒザをしっかり曲げろ!」と命令する“自分”がいます。そして、その自分が命令している相手である“自身”がいます。彼は前者の命令者である“自分”を「セルフ1」と名づけ、後者の実際に行う実行者である“自身”を「セルフ2」と名づけました。

人はうまくやろうとすると、「ああしよう・こうしよう」と思います。つまり、セルフ1が働きます。しかし、それによって、かえってセルフ2の働きがじゃまされ、その可能性が働かなくなるのです。ガルウェイ氏はセルフ1を黙らせセルフ2をフルに働かせることがいいパフォーマンスを生むことを発見したのです。

この考え方はテニスだけでなく、スキーやゴルフといったほかのスポーツにも適用され、大きな成果を挙げました。そしてさらにビジネスにも適用され、マネジメント、セールスの分野でも効果を生み出すことが分かったのです。上司が「ああしろ・こうしろ」と指示・命令するのではなく、部下の中にあるセルフ2の力を信じ、それを働かせることが結果的によい結果につながるのです。

本書で取りあげられている例はあくまでテニスです。しかし、テニスコーチを上司、テニスプレイヤーを部下に置き換えることで、マネジメントへのたくさんのヒントが見つかります。コーチングのベースとなっている考え方を、わかりやすく学ぶのに最適の本です。なお、この考え方に基づいて、さまざまな分野の解説書が出ているので、その本からも学ぶことができます。

<インナーゲーム関連書籍>
■『インナーテニス―こころで打つ』
■『インナーワーク―あなたが、仕事が、そして会社が変わる。君は仕事をエンジョイできるか!』
■『インナースキー―自然上達への最短距離 』
■『新インナーゴルフ』
■『演奏家のための「こころのレッスン」―あなたの音楽力を100%引き出す方法 』

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