コーチング/人材育成・組織作り

平尾誠二さんの「気づかせて育てる」(2ページ目)

コーチングの元をたどれば、スポーツのコーチング。そのスポーツの世界でもコーチのあり方に大きな変化が起きています。元ラグビー日本代表監督の平尾誠二さんが語る「気づかせて育てる」コーチングをご紹介します。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

今なぜ、技術を教えることが重要でなくなったのか?

早く・長く・正確に、だけでは十分じゃない
今指導者に求められることは知識よりも、選手に対して「本当にうまくなりたいのか」「一流になりたいのか」という気持ちをいかにつけさせるかなのです。(『キリカエ力は指導力』)

平尾さんは、「今の若い人たちは、興味のあることについては本当によく知っている」と言います。現代は情報化社会ですから、情報を手に入れようと思えば、さまざまな手段を使うことで容易に手に入れられます。下手をすれば、コーチよりも選手のほうが技術や戦略などについて、よく知っているかもしれません。

これはビジネスでも全く同じでしょう。インターネットをはじめ、莫大な情報が、素早く、無料で手に入ります。また、社内の情報にしても、コンピュータネットワークの整備や、組織のフラット化の中で、より自由に手に入れられるようになってきました。知識や情報などで上司が部下に優位を持ち、それを教えることが仕事ではなくなってきているのです。

今なぜ、失敗することが大事なのか?

「反復練習によって、パスであれば、早く・長く・正確に、は訓練できます。しかし身に付かないものがあります。それは、いつパスをするか?という判断力です」。

平尾さんはパスを例に、実戦には不可欠の判断力の重要性を指摘します。

これはビジネスでも全く同じでしょう。特にモノ作りではなく、人にかかわるサービスといった仕事であれば、特に重要になります。マニュアルでやり方やスキルは教えられますが、大事なのはどんな状況で、いつそれを使うか? これにはまず状況を作って、そこで実際に試してみることが必要になります。

そして、そのときに必ず付いてくるのは失敗です。数多く試す中で、失敗も多くなってきます。その失敗に対して、コーチや上司がどう対応するかが大きな分かれ目になります。

「失敗に対する寛容さが大事です。パスが下手なプレーヤーには、パスをして昔怒られたことがあるプレーヤーが多いんです。怒られてパスをしなくなっているのです」

上司であるあなたはいかがでしょう? あなたの部下がこんな状態になっていませんか? 試すことがなくなり、その結果、判断力はいつまでたってもつきません。ますます変化が激しくなり、前例が通用しないビジネス環境のなかで、状況に合わせた判断力の重要性は高まるばかりです。そして、それを鍛えるためには失敗を恐れずに、数多く試す以外に道はないのです。

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