不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

重要事項説明書のポイント(不動産の状況・売買代金)

「重要事項説明書のポイント」の3回目。今回は未完成物件に関する事項、マンションの使用や管理に関する事項、その他不動産の状況に関する事項、売買代金や金銭に関する事項などについてみていくことにしましょう。(2017年改訂版、初出:2004年7月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.107】

重要事項説明書について、前回は法令に基づく制限や道路、施設に関するポイントを説明しました。引き続き今回は、未完成物件、マンションの使用や管理、その他不動産の状況、売買代金や金銭に関する事項などについてみていくことにしましょう。


工事完了時における形状・構造等

これは未完成物件の場合に該当する項目ですから、完成済みの新築住宅や中古住宅(工事を伴わない場合)のときには、この説明が省略されます。

建物の建築工事や増改築工事、あるいは土地造成工事などを前提とする売買で、その工事が契約締結時点で完了していない場合には、その形状や構造、設備、宅地の状態などについて、図面や資料を用いながら詳細に説明されます。

なお、新築物件の場合には完成済みであっても、重要事項説明とは別途に建物についての念入りな説明がされることも多いでしょう。


一棟の建物またはその敷地の権利や管理・使用に関する事項

これは区分所有建物(マンション)の場合に該当する部分です。共用部分専有部分、専用使用権、管理など説明される項目の内容は多岐にわたります。

説明を受けるほうもその内容を頭のなかでよく整理しながら聞いていないと、共用部分のことなのか専有部分のことなのか、混乱する場合もあるでしょう。

分かりづらいのが「専用使用権に関する規約等の定め」という項目ではないでしょうか。ここではマンション全体での「専用使用権に関する定め」が説明されるため、売買の対象住戸とは関係のない権利(専用使用権)も記載されます。

したがって、そのなかで実際に購入者が使用できるものとそうでないものを区別しながら理解することが必要です。なお、各住戸に付属するバルコニーなども共用部分であり、普段そのバルコニーを使用する権利もこの専用使用権に該当します。

計画修繕積立金管理費に関する項目では、売主による滞納がないのか、もしあった場合にはどのように処理されるのかを確認します。

また、計画修繕積立金の積立額にも注意しなければなりません。今後の大規模修繕計画などに対して積立額が少ない場合には、その工事実施時期に合わせて特別に工事負担金を徴収される可能性もあります。

「管理の委託先」の項目では、中古マンションの場合に管理形態として全部委託管理、一部委託管理、自主管理のいずれかを説明されるだけのケースも多いでしょうが、できるかぎり管理員の勤務時間や勤務曜日などについても詳細な説明を受けたいところです。

また、共用部分および専有部分(売買対象住戸)における過去の修繕の履歴や、今後の修繕計画なども分かる範囲で説明されることになっています。


建物状況調査の結果の概要

宅地建物取引業法の改正により、2018年4月1日から追加される項目です。

過去1年以内に実施された建物状況調査(インスペクション)について、その結果の概要を説明することが法律上の義務になりましたが、調査の実施そのものを売主や宅地建物取引業者に義務付けるものではありません。

買主の参考になるのであれば1年以上前の調査結果が説明されることもあるほか、調査後に大規模な自然災害が発生し、建物の状況が調査時点と異なる可能性がある場合でも、原則として調査時点の内容が説明されることになります。


建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況

これも2018年4月1日から追加される項目であり、既存建物(中古住宅など)の場合に該当します。ただし、説明されるのは原則として書類の有無だけであり、その内容については説明義務がありません。

書類の保存状況が説明されるのは次の項目です。
建築確認申請書および添付図書、確認済証(新築時、増改築時)
検査済証(新築時、増改築時)
□ 建物状況調査結果報告書
□ 既存住宅性能評価書
□ 定期調査報告書
新耐震基準等に適合していることを証する書類


土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域などに関する事項

売買対象の宅地建物が「造成宅地防災区域」「土砂災害警戒区域」「津波災害警戒区域」に指定されている場合には、その旨が説明されます。

宅地建物取引業者に説明の義務があるのは、それぞれの区域に含まれるかどうかだけですが、該当する場合には指定区域に関する資料の提示などを求めるようにしましょう。


石綿使用調査の内容

この項目では石綿(アスベスト)使用調査の記録があるかないか、記録がある場合にはその内容が説明されます。売主に対して調査の実施や除去を義務付けるものではなく、「記録がない」と説明されてもそれは石綿が使われていないという意味ではありません。

ちなみに、建物への石綿の使用が禁止されたのは近年のことであり、2004年以前の住宅ではアスベストを含む建材が使われているケースが多くなっています。


耐震診断の内容

売買対象の建物が耐震診断を受けたかどうか、受けた場合にはその内容が説明されます。石綿の場合と同様に、耐震診断の実施を売主に義務付けるものではありません。残念ながら「耐震診断は実施していない」という説明だけで終わってしまうことも多いでしょう。

耐震診断が実施され強度不足が明らかになっている場合には、その対策も含めてしっかりと確認することが欠かせません。


住宅性能評価に関する事項

新築住宅の場合において、登録住宅性能評価機関による住宅性能評価書の交付を受けている場合にはその旨が説明されます。評価書の交付を受けていれば、その内容についてもしっかりと説明を受けるようにしましょう。


売買代金等に関する事項

この項目が独立して記載されている場合と、次の「売買代金以外に授受される金銭」の項目の備考欄に記載されている場合があります。売買代金総額とその内訳(土地価格、建物価格、消費税額)が、売買契約書に記載されたものと相違なければとくに問題はありません。


売買代金以外に授受される金銭

この項目では、売買代金以外に “売主と買主の間で” 授受される金銭について説明されます。

具体的には、手付金固定資産税都市計画税の清算金、管理費修繕積立金の清算金、借地権であれば地代の清算金、賃貸用物件での賃借人付売買であれば家賃の清算金と敷金引き継ぎ分などが該当します。

宅地建物取引業者に支払う媒介手数料や、住宅ローンの諸費用、登記費用などは、売主と買主の間でやり取りする金銭ではないため、この項目には該当しません。

なお、手付金は残代金支払い時に売買代金へ充当されますが、それまでの間は法的に売買代金ではないため、この欄に記載されることになっています。

各種の清算金は物件の引き渡し日が確定していれば具体的な金額が記載されますが、大半の場合は引き渡し日が未定のためおおまかな予定額が記載されるか、あるいは 「引き渡し日をもって日割り精算」 などと記載されることが多いでしょう。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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