あるとき書店で立ち読みした雑誌に、マンション購入者の「父親」の話が紹介されていました。

まだ独身の子がマンションを買いたいというので反対したところ、「マンションは買えば資産になるし、結婚して住まなくなったら誰かに貸せばいいんだから」と押し通されてしまった、というような話だったように記憶しています。

どの雑誌だったのか、その子が娘だったか息子だったかなど明確には覚えていませんが……。

夕暮れのマンション群

資産になるマンションも資産にならないマンションも存在する。借り手がつかないマンションも……

その子の話はまるきり営業担当者のセールストークのようですが、それほど気にも留めずに忘れかけていました。

ところが先日、私の友人の同僚の若い独身女性が購入したというマンションのことを聞いて、ふと上記の話を思い出したのです。

その女性とは直接の面識はないし、何かの相談を受けたわけでもなく、すでに買ってしまったものについて私が意見する筋合いでもないので、本人に対して何もいうつもりはありません。

しかし、そのマンションは「資産にならない、将来は売ることも貸すことも難しい」と予測されるような物件だったのです。

今回は、主に独身者が自らの居住用としてマンションを買うときの注意点などについて考えてみることにしましょう。


「仮住まい」だからこそ難しい独身者の物件選択

「マンションは買えば資産になる、住まなくなったら貸せばいい」というのは、あくまでも売る側のセールストークに過ぎません。買っても資産にならないマンション、住まなくなったら貸せないマンションが存在することも十分に考えてみるべきです。

もちろん、永住するつもりで購入するマンションなら自分の希望条件を優先して物件を選べばよいのであり、必要以上に「資産価値」にこだわるべきではありません。これから先も「ずっと結婚しない」と “確定” しているのであれば、それはそれで構わないでしょう。

しかし、「将来は結婚するかもしれないけれど、そのときは貸せばいいんだし……」などと安易に考えることは避けなければなりません。

だからといって、自分の希望条件を抑圧しながら「資産価値の高い物件、貸せる物件」にこだわり過ぎるのも本末転倒です。

自分が快適に暮らせることを前提にしつつ、将来のことも考えて物件を選ばなくてはなりませんから、独身者の「仮住まい」としてマンションを購入することは、実は難しい物件の選択眼を要求されるのです。


将来的に貸すのなら賃貸経営の意識も必要になる

自分が購入したマンションを誰かに貸すのなら、少なからず「賃貸経営」としての意識をもつことも欠かせません。

管理費修繕積立金固定資産税都市計画税などの負担だけでなく、自らが「家主」として一定期間ごとに設備を取り替えたり、賃借人が入れ替わるごとに室内のリフォームをしたりすることも求められます。

また、賃料の滞納があったときや室内で入居者に事故があったとき、何らかのトラブルが生じたときの対応など、知っておかなければならないことも数多くあるでしょう。

賃貸管理を不動産会社などに丸投げするのであれば手取り収入が少なくなることもあるうえ、その場合でも家主としての責任がまったくなくなるわけではありません。

マンションの外観

第三者に貸すときは、家主としての自覚も必要になる

当初から投資目的で造られた分譲マンションであれば、賃貸経営についてのサポート体制ができている場合もありますが、通常の分譲マンションを第三者に貸すときは、あくまでも自分の責任で運用することが原則です。

もちろん、それ以前に空室リスクの問題についても考えておかなければなりません。

長期間にわたり入居者がいない場合だけでなく、入居者が替わるときにも賃料収入のない空白期間が生まれます。単純に〔見込み賃料×12か月〕で収支を予測することはできないのです。

仮に空室状態が1年間続けば、住宅ローンの支払いを別にしても、管理費や固定資産税などの負担で年間50万円程度が持ち出しになることも考えられます。

マンションを購入した独身女性が結婚して専業主婦になったとすれば、このような費用をすんなりと負担できるかどうかも疑問でしょう。

そのような負担に備えた積み立てをしておこうとすれば、賃料収入でようやく住宅ローンの支払いができるような計画では成り立たないことにもなります。


将来の需要を見極めることも重要

自分が住まなくなったときには誰かに貸すにしても、あるいは売却するにしても、その時点で需要がなければどうすることもできません。

しばしば「駅近のマンションなら必ず貸せる」といった説明がされることもありますが、本当にそうでしょうか?

たしかに駅近であれば将来的にもそこそこの需要は維持されるでしょう。しかし、そのエリアで賃貸物件が供給過剰になっていれば、たとえ駅近であっても「見込み賃料は10万円だったのに6万円でしか借り手がつかない」といった事態も想定されます。

これからの時代は次第に日本の人口が減少し、住宅需要も減退していくことが予測されているなかで、すでに住宅の空家数は約820万戸(総務省:住宅・土地統計調査による2013年の推計)にも達しています。

そのうち賃貸用住宅が約430万戸であり、都市部のマンションでも空家状態の物件は決して珍しくありません。

大都市圏なら需要はまだしばらく堅調だという見方もあるでしょうが、自治体の資料などをもとに町丁目ごとの人口の動きをみると、決してそうとはかぎらないことに気がつきます。

東京23区内の場合でも、すでに何年も前から人口減少が始まり、あちこちに空家のマンションやアパート、一戸建て住宅などが目立つ区域もあるのです。

少し郊外へ行けばなおさらで、私鉄沿線の駅前を見ただけで「衰退している街」であることが感じられる場合もあるでしょう。そしてそのような街でもやはり、いま現在も新築分譲マンションは供給されているのです。

さらに学生による賃貸需要が大きな街では、少子化による大学キャンパスの閉鎖や移転などで、賃貸物件が一気に供給過剰となる危険性もあります。

将来の需要を見極めるためには、本来であれば地域を絞った市場動向や人口動向を事前に調べるなど、冷静な分析や判断も欠かせないのですが、実際にそこまでできている人は極めて少ないでしょう。


マンションの資産価値を落とすのは「あなた」かもしれない

独身者によるマンション購入を否定する気はありません。むしろ、もっと積極的に購入してもよいと考えます。しかし、購入するからにはそれなりの高い意識も持っていただきたいのです。

老朽マンション

適切な管理や修繕ができなければ、極度の老朽化や荒廃もある

マンションの総戸数に対して「住まなくなったら貸せばいい」と安易に考える人の割合が少ないうちは、それほど大きな影響はないでしょう。

ところが、単なる「仮住まい」としてしか考えていない人の割合が多くなればなるほど、資産価値低下の危険性が高まることも理解しなければなりません。

自分が住まなくなったときに貸せなかったり、想定どおりの賃料収入が得られなかったりすることによって、管理費や修繕積立金の滞納者が増える懸念もあります。

また、そのマンションに居住しない区分所有者が増えることで、管理組合の運営に支障をきたすこともあるでしょう。

そのような原因で管理会社への支払いができずに管理委託契約が解除され、かといって自主管理に立ち上がる人もなく、異様に荒廃している分譲マンションも現実に存在しているのです。

もし、購入者の全員が「住まなくなったら貸せばいいや」と気楽に考えているのであれば、そのマンションに将来的な資産価値などないものとみたほうがよいでしょう。そのマンションの資産価値を落とすのは「あなた」かもしれないのです。


結婚後の住宅ローンに影響することもある

独身時代に組んだ住宅ローン(本人が住まなくなることで、金利が高めのアパートローンなどに切り替えられることもあります)が残っていることにより、結婚後に別の住宅を購入しようとしたときに思わぬ障害となることもあるでしょう。

もちろん、確実に利益が見込めるような優良な資産だと金融機関が判断すれば、逆に有利に働くこともあるでしょうが、そのためにも空室リスクが低く賃料水準を維持できる物件であることが求められます。

冒頭のような「売れない、貸せない」マンションを購入すれば、一生それに縛られ続けることも考えなければなりません。

数十年経ってローンの支払いがなくなっても、管理費や固定資産税などの支払いは残ります。管理費などを支払わずに廃墟マンションになってしまっても固定資産税などが請求され続け、税金を支払わなければ「他の資産」が差し押さえられることすらあるのです。

事前に市場動向などをよく調べることも含め、慎重な物件選びを心掛けることが大切です。「家賃がもったいないから “買わなければならない”」などといった強迫観念にかられ、妥協の産物としての物件選びにならないようにくれぐれも気をつけてください。


関連記事

不動産売買お役立ち記事 INDEX

物件見学における「マンション管理」の確認ポイント
1981年に建築された建物は新耐震基準なの?
マンションの役員は避けられる?
駅からの距離、徒歩時間だけではない住宅立地の要素

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。