京都グルメ/京都の和食

上賀茂 秋山(2ページ目)

今や予約の取れない店となってきた「上賀茂 秋山」。地元の野菜を使った「おもてなし」溢れる料理の数々と、古民家を改装した店内の雰囲気は、心の原風景に触れる「郷愁」すら感じさせてくれます。

執筆者:麻生 玲央

春の料理達

ご主人と若く礼儀正しい調理人の方々は皆ネクタイをきりりと絞められ、絶妙な連携プレーで次々と目にも鮮やかな料理を仕上げて行かれます。

ご主人の目指す料理は「旬の野菜と魚を使った健康的な料理」。中でも旬の野菜が豊富な夏場と1月は思う存分腕が振るえるとのことです。今回お訪ねした4月は、野菜の少ない端境期のため、苦労して集められた山野菜を、惜しげも無くふんだんに使ったお料理をいただけました。

今宵は6,300円の夜コース

一皿目。
海の幸と山の幸による一皿目。筍の淡い甘味が印象的です。
・「生トリ貝、焼き筍、ラッキョウの酢みそ和えで
一品目からいきなり春の目玉食材「筍」の登場に、心が浮きだちます。食べてみると分かりますが、筍はもちろん、付け合わせの野萓草(ノカンゾウ)も大原のものを使われており、質・鮮度共に厳選された素材選びだということがよく分かります。

この皿で供された「筍」は軽く焼いてあり、素材そのものがストレートに味わえる趣向で、大原の芳醇な土の香りに混じって、「筍」が持つ自然な甘味が舌の上に拡がります。生トリ貝もねっとりとした柔らかな食感がラッキョウの酢みそとよく合い、一皿目から、酒がどんどんすすみます! 尚、この店では酒のリストはありませんので、好みの酒を口頭で伝えて選んでもらいますが、基本的に酒はご主人にお任せするのがベターでしょう。

・「明石鯛と卵豆腐の椀
椀物。
本日の器は蓋の裏に「打ち出の小槌」が描かれていました。

さて、2品目で椀物の登場。椀タネの卵豆腐のツルンッとした滑らかな舌触りと食感が、とりわけ印象的。烏野豌豆(カラスノエンドウ)の新芽や摘みたての木の芽なども、春を感じさせる薫香を醸し出し、上手く全体の風味をサポートしています。

明石鯛は皮の炙り加減が香ばしく仕上がっており、身の肉厚なジューシーさにも引けをとらない存在感。ここまで椀タネに感心させられたのは久しぶりです。丁寧な仕事ぶりが強く伝わってくるプロならではの見事な一品。

・「お造り
お造り。
竹の器が季節感を演出し、盛り付けも彩り豊か。

お造りは、初鰹のタタキ、ホウボウの昆布〆、のれそれ(菊菜ペーストの酢の物で)の三品。薬味は別添えで、野生のクレソン、ルッコラ、野蒜。山葵の花などが器に盛られています。

観光客だけではなく、地元の食通までもが認める人気店レベルになると、お造りも単なる刺身の盛り合わせではなく、丁寧に手をかけた「料理」となります。

まず、初鰹は客に出す寸前に絶妙の熱加減で炙り、風味を一層引き立たせる。そしてホウボウは昆布でしみじみと〆る。のれそれは菊菜をペーストにしたものを加えて酢物にし、薬味は数種類のハーブ(野草)を惜しげもなく供す。そしてそれらを竹筒に美しく鮮やかに盛り付ける演出など、そのどれもが素晴らしい作り手のエネルギーと創作意欲を感じさせてくれます。

お造り。
野草の薬味による薫香と食感が実に良いアクセントに。
よく「椀物」の味で、その店のレベルが分かると言いますが、私的には「お造り」にこそ、その料理人の真価が現れるような気がします。素材を選ぶ目利きと仕入れ、エイジングの見極め、仕込みの手間暇、盛り付けの妙など、一皿が完成するまでに難度の高さが要求されるはずですから、この辺は「江戸前」も「京料理」も同じですね。

・「黒豆のお粥
お粥。
素材の味を前面に押し出した逸品。

まるで黒豆から紡がれた絹のような、繊細なフレーヴァー。お粥というよりも、スープ(汁)状に仕上がっています。パンダ豆、長芋、ヨモギ麩が、食感と香りにアクセントをつけ、食べ手に地の物が持つ素朴な味わいを優しく伝えてくれます。まさに大地の恵みを最大限に活かしきった傑作料理。

次ページでは、コース後半の御料理たちを御紹介します
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