京中華の超新星

今回ご紹介するのは、西陣にオープンした隠れ家中国料理「美齢(めいりん)」。
めいりん。
格子戸が印象的な町家造り。
「美齢」と聞いてすぐに思い浮かぶのは、上海の裕福な家庭に生まれ、蒋介石夫人となった聡明かつ美しい女性の名前。そんなノスタルジックな名前と同名のレストランが昨年、西陣のとある路地裏に忽然と姿を現したと聞いて訪れずにはいられませんでした。

メイリン。
店は京都らしい細い路地にあります。
京都は西陣といえば金・銀糸で織られた絢爛豪華な西陣織の発祥の地ですが、その西陣織を千年以上前から織り出してきたのは細い細い路地に連なる、昔ながらの質素な町家長屋。ここ「美齢」も西陣織会館のすぐ裏手の「車は通れません」と書かれた観光客とは無縁の路地の奥に、ひっそりと隠れて訪れる客を待っています。

カウンターまわり。 メニュー。
カウンター前には乾物がいっぱい。 メニューももちろん西陣織。
ここは醍醐プラザホテルの「美齢」で料理長をされていた曽根章宏さんが、独立して始められたお店。開店当初はまさに「隠れ家」的な一軒でしたが、その味と雰囲気が評判を呼び、今や予約の取りにくい店となりつつあります。

カウンター。 2階。
1階のカウンター席 2階の座敷席
店内は1階がカウンターとテーブル席、2階が座敷席という仕様。特に1階にある4人席のみのカウンターは、隣り合う2組(2人×2組)が顔を合わせることなく座れる「逆くの字」型のL型カウンターとなっており、隣客が気にならないような気の利いた工夫が施されています。斜め前の客と顔が合ってしまうL字カウンターとは違って、落ち着いて食事が愉しめるのは嬉しいですね。

また、メニューリストを始め、座布団など各所に地元の西陣織が使われているのも美しくユニークですし、まさに女性を連れていきたい一軒といえるでしょう。


超炎が生み出す一皿

メニューは昼夜共にコースがありますが、今回はアラカルトを中心にオススメを御紹介!(一部、コース料理あり)。

・季節野菜の蟹肉あんかけ
季節野菜の蟹肉あんかけ。
季節野菜の蟹肉あんかけ(800円)
まさに「中華は火が命」という言葉通りの、ジェットバーナーの火力だからこその凄技で、単に火力だけの力押しではなく、各野菜は満遍なく、それぞれに適した火入れ具合に保たれており、シンプルながら拡がりのある味わいに仕上がっています。ジェットバーナーの火力を使いこなし、この域にまで持ってくるシェフの技量とセンスは、まさに炎の魔術師、ですね。

また、あんかけはホテル出身のシェフらしい優しく繊細な味わいに仕立ててあり、この絡み具合も完璧すぎるバランス感! 野菜への火入れと、一捻りしたあんかけ、とシェフの全ての妙技が注ぎ込まれている一皿といえるでしょう。


・酢豚
酢豚。
酢豚(800円)
まず口に運んで驚くのは、酢豚の要である肉質の柔らかなこと! もうこの食感だけでも旨いのなんの状態ですが、とろりとした滑らかなタレを絡めて食すと、噛みしめる度に湧き出る甘・酢・コクの渾然一体感! 複雑でありながら纏まりのある味わいは、とりわけ紹興酒を強烈に誘いますね。しかしそれでいて、広東料理を得意とするシェフならではの、繊細で上品なテイストに仕上げられているのですから、見事の一言。野菜もたっぷり入っていますので、ヘルシー志向な女性にもオススメしたい一皿です。


・上海風ヤキソバ
ヤキソバ。
とても軽やかで、さっぱりとした味わいの一皿。
こちらはランチコースからの一品。「美齢」ではキャベツを使った料理は、このヤキソバぐらいですので、質の良いキャベツが入荷した時にだけ、昼や夜のコースで出されているとのこと。ですので、この料理には嬉しいほどキャベツがたっぷり。

しかも驚くのは、これだけ野菜が入っているにも関わらず、全然水っぽくないところ! 強い火力で水分が程良く抜けていて、抜群のさっぱり食感を実現。ソースや野菜の水分でべっちょり、というヤキソバは苦手なので、こういった気合いの入った極上ヤキソバに出逢えると、非常に嬉しいですね。

また、麺は細麺タイプで他の食材とも絡みやすく、キャベツとも渾然一体となり、舌を愉しませてくれます。現在、このメニューは通常メニューではありませんが、運が良ければ昼か夜のコースで登場する可能性ありです。ただ、近い内に通常メニューを大幅に変えられるとのことですので、ひょっとすると(好評ならば)、いずれ単品メニューとしてレギュラー化してもらえるかもです。
次ページでは、圧巻の麺類達と必食デザートを御紹介します