夏の京都、吉兆 嵐山本店

嵐山

夏の嵐山

平安の昔から貴族が別荘を構え、春は桜、夏は鵜飼、秋は紅葉、冬は雪景色と、散策や屋形船での舟遊びを楽しんだ嵐山。特に大堰川(渡月橋より上流一帯の保津川)の左岸には、近世でも大阪を始め関西の有力者が四季折々の風情を求めて別荘を作ったものでした。そんな別荘の中でも罧原堤続きの、やや上流の飛び切りの場所に、大阪の茶道具商、児島嘉助の別邸がありました。そこを戦後間もなく譲り受け、昭和23年に「嵯峨吉兆」を開店させたのが、「吉兆」の創業者湯木貞一さんだったのです。
吉兆

門には大きく「吉兆」の文字

現在の「京都吉兆 嵐山本店」は、二代目の徳岡孝二さんを経て、1995年からは三代目・徳岡邦夫さん(1960年生)が総料理長に就任し、初代の精神を受け継ぎながらも独自の視点で数々の改革を行い、見事ミシュラン三つ星に輝いておられるのは広く知られているところですね。
嵐山吉兆の外観

嵐山吉兆の外観

渡月橋から大堰川に沿って暫く歩くと、ひと目でここだとわかる、重厚で侘びた風情の木の門構えが現れます。門柱にさりげなく掛かっているのは、華美を排した「吉兆」の表札のみ。お出迎えの男衆の方に案内されて門をくぐり、玉砂利を踏んで、蝉の合唱を聴きつつ左手の母屋へと進みます。緑に包まれた数寄屋造の母屋の玄関を上がり、左手に進むと、そこには二方が庭に面して畳敷きの広縁を持つ広々とした夏座敷が、いかにも涼しげな設えで待っていてくれるのです。
店内

夏は涼しげに模様替え

障子や襖はすべて取り払われ、目に風を呼ぶ御簾(みす)や葭簀(よしず)戸に入れ替えられています。見上げると欄間までもが葭簀で涼しさが目にひとしお。
軸

竹内栖鳳の鮎のお軸が目を惹きます

そして、床の間には竹内栖鳳の鮎のお軸。これぞ京都の夏室礼というお出迎えに汗もすっと引っ込みます。
酒

まずは吉兆オリジナルの日本酒「吉兆貞翁」でスタート

まずは、たおやかな着物姿で登場されたお女将さんからバカラの盃でご挨拶の一献を戴き、お食事の始まり。冷酒は貞一翁に因んで名づけられた「吉兆貞翁」。古い縁金千筋バカラの徳利が、これまた涼しげな銀製のクーラーに入っての登場です。

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