暮らしと四季折々の風の名前・呼び名
「南風号」のように風の名前がつく船も多い
また、立春から数えて210目(毎年9月1日ごろ)には「二百十日」、220目には「二百二十日」という雑節があります。これは、稲穂が実る大切なこの時期に台風にみまわれることが多いため、農家の厄日として警戒する日で、日本各地で風を鎮めるお祭りが行われています。
▷9月1日「防災の日」の由来、雑節「二百十日」、風祭りとの関係
四季折々に吹くさまざまな風には、独特の呼び名があります。そこで、春夏秋冬に吹く風の名前をピックアップしてみました。その名を聞けば風の表情や情景まで浮かんでくるので、まさに風情溢れる名称といえるでしょう。
春に吹く風の名前・呼び名
春に吹く風の名前/桜の花を散らす「花風」「花嵐」
東から吹いてくる春風。菅原道真が京都から大宰府へ左遷される際に、庭の梅を詠んだ「東風吹かば にほいおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」という有名な歌があります。
・春一番(はるいちばん)
春の初めにその年に初めて吹く南寄りの強い風。漁師が海難事故を警戒するためにつけたといわれています。
▷「春一番」とはどんな風?「春二番」「春三番」もあるの? 由来・定義・豆知識
・春嵐(はるあらし/しゅんらん)
・春疾風(はるはやて)
春先に吹く激しい風。
・花風(はなかぜ)
桜の花の盛りに吹く風。桜の花を散らす風でもあります。
・花嵐(はなあらし)
桜の花を散り乱すほどの強い風。
・貝寄せ(かいよせ)
陰暦2月20日頃に難波の浦に貝を吹き寄せる西よりの風のこと。
夏に吹く風の名前・呼び名
夏に吹く風の名前/「薫風」は青葉の薫りを感じるような風の表現
新緑の間を吹きぬけてきて、青葉の薫りを感じるような初夏の風です。
・緑風(りょくふう)
初夏の青葉を吹き渡る風。
・青嵐(せいらん/あおあらし)
初夏の青葉を吹き渡るやや強い風。
・青田風(あおたかぜ)
青々とした水田の上を吹きわたる風。
・黒南風(くろはえ)
梅雨時に南から吹いてくる季節風。
・白南風(しろはえ)
梅雨明け後に南から吹いてくる季節風。
・南風(はえ)
南から吹いてくる夏の季節風。
・盆東風(ぼんごち)
夏の終わりに東から吹いてくる風。暴風雨の前兆として漁師がつけた名前です。
秋に吹く風の名前・呼び名
秋に吹く風の名前/金色に輝く稲穂を揺らす「金風」
二百十日、二百二十日のころ、野の草を分けながら吹きすさぶ強風、台風。昔は台風のことを野分といいました。
▷9月1日「防災の日」の由来、雑節「二百十日」、風祭りとの関係
・雁渡し(かりわたし)
雁が渡ってくる9月から10月に吹く北風のこと。
・いなさ
南よりの暴風。大雨を伴い、風水害や海難を起こすおそろしい風です。
・金風(きんぷう)
秋風のこと。黄金色の稲穂を揺らすことに由来します。
冬に吹く風の名前・呼び名
冬に吹く風の名前/「木枯らし」は日本の太平洋側の地域で晩秋から初冬にかけて吹く北よりの強い風
晩秋から初冬に吹く冷たい北風で、木の葉が吹き落とされ、枯れたようになってしまうことに由来します。気象庁で木枯らし1号が発表されると、冬型の気圧配置になったあかしです。
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・おろし
冬山から吹き降りてくる冷たい強風。「六甲おろし」「富士おろし」のように山の名がつきます。
・空風(からっかぜ)
冬山を超えて吹き降りてくる下降気流で、冷たくて乾燥した風。関東・東海地方の冬の季節風です。
風の名前に関してよくある質問
Q. 子どもに風の名前をつけるのは良くないのですか?
A. 揺れ動き安定しないイメージや自然災害の連想などから、子どもに風の名前をつけるのはよくないという人もいます。しかし、古来、風はさまざまなものを運んで影響を及ぼすとされたので、風物詩、風流、風雅などたくさんの言葉が生まれました。このように心を動かすようなイメージから人気の名前です。また美しい名前をつけるコツは、風そのものの名称をつけるのではなく、「風」「颯」「帆」といった風にまつわる漢字を取り入れて名前をつけると選択肢が広がります。意味や響きで考えるとよいでしょう。
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