シングルモルトと料理の相性を探る
マリアージュなんて似合わない言葉を使っているが、簡単に言えば「シングルモルトと料理の相性」のこと。ここに挙げたベスト5は、わたしの嗜好で選んだものであり、あくまで参考として述べるものだ。さてモルト原酒は製麦工程で麦芽を燻すことが多いため、必然的に香ばしい料理、たとえば燻製、焼き物、炒め物などとの相性度が高い。でもわたしは、すべてそうかしらん、と思っている。スモーキーさが際立つウイスキーは料理に強く作用しておいしさを損ねる場合も多い。ウイスキーと料理が主張し合い、ぶつかり合って、ウイスキーが料理の味わいを支配してしまうからだ。
この記事の5品はそのスモーキーさとの相性を探るためにあえて、すべて燻したり、炙ったりした料理ばかりである。そしてシングルモルトの飲み方も考慮しながら、基本的に互いが主張し合うことなく口中で両者の香味が上手く溶け合う組み合わせを選んだつもりだ。機会があれば皆さんも試していただきたい。
またシングルモルトや飲み方も皆さんの好みで、よりよい組み合わせを探っていただければ嬉しい。
シングルモルトの飲み方も考える
上:白州12年ロックとハーブが薫るチキン/下:山崎12年水割りと炙りトロ・サーモン(撮影2点とも/川田雅宏) |
ウイスキーを食中酒として愉しむとき、ロック・スタイルを試みる人は少ないかもしれない。でも白州12年の甘く柔らかいスモーキーフレーバーとフルーティーなコクが、ロックによってよりクリーンな感覚を増し、淡白ながらハーブが薫るスパイシーなチキンをふんわりと包み込む。ロックの氷がゆるやかに溶けるほどに樽香も浮かびあがり、白州12年のもうひとつの特長、新緑の香りとともにスパイシーなチキンの旨味を引き立てる。
ついで4番目。ベスト4に入るのは「山崎12年水割りと炙りトロ・サーモン」。
山崎12年の香味は複雑だ。ホワイトオーク樽由来の甘いバニラ香と熟した果実香にシェリー樽原酒がより濃厚さを与え、そこにミズナラ樽原酒のオリエンタルな独特の香味が潜む。
刺身でいただける上等なサーモンを炙ったものを、濃い目の水割りと合わせる。山崎の香味がサーモンのほのかなスモーキーさと複雑にからみ合う。山崎12年の濃い目の水割りのもつ程よい甘みが、独特の滋味を湛えたサーモンの旨味を損なうことなく、新たな味覚の世界へと誘い込む。それは繊細で上品な味覚を愛する日本人が好む世界だ。
次頁ではベスト3について述べる。スコッチのシングルモルトとの相性も登場する。
(次頁へつづく)