ソーダで愉しむ女性
その女性は30歳前後。記憶はないのだが、私がカウンターに座って、優しいシングルモルトでソーダ割り、と頼んだことがあったそうだ。それを真似てからシングルモルトを飲むようになったという。その時、私はザ・グレンロセスのソーダ割りをビールのようにグビ、グビと飲んだという。グレンロセスはマイルドで飲みやすいから、きっとその時、よほど喉が渇いていたのだろう。
上/軽くてとても飲みやすいトーモア12年。下/フルーティでほのかなスモーキーさが特長の白州12年。 |
彼女は次にそのバーを訪れた時に、グレンロセスのソーダ割りを飲み、2杯目はストレートで味わいを確かめた。そんでもって「なんだ、シングルモルトにも飲みやすいものがあるのか」と目覚めたらしい。
いまはトーモア12年、白州12年のソーダ割りを飲むことが多いという。トーモアは軽くてとても飲みやすい。華やかな甘さの中に、スパイシーさが潜む。
白州12年はフルーティでほのかなスモーキーさがある。この人はきっと、いくぶんスパイシーさのあるシングルモルトが好きなんだな。
自宅と外で飲み分ける女性
もうひとり。30代後半の女性。この人は強い。さんざん飲んで、最後はご主人をバーに迎えにこさせる。ご主人を「アッシー」と呼び、彼は苦笑しながらも受け入れている。どういう夫婦なんだろうね。彼女はその日の気分で何でも飲む。ザ・マッカラン、ザ・バルヴェニー、ザ・グレンドロナック、グレンファークラス、グレンモーレンジ、ハイランド・パーク、ボウモア、ラフロイグ。バーのカウンターで会う度に、違うボトルが彼女の前に並んでいる。
洒落たショットグラスに、もちろんストレート。ただ時間をかけてゆっくりと飲む。時にチェイサーの水を含み、上手にウイスキーと付き合っている。
この間、久しぶりにカウンターで隣に座った。そこで「最もよく飲むウイスキーは何」と聞いてみた。「シングルモルトは山崎12年、ブレンデッドはサントリーリザーブ」との答が返ってきた。
私は「山崎なんか飲んでるとこ、見たことない」と言うと、「ああ、山崎もサントリーリザーブも家で飲むの。今夜も多分、寝酒に山崎を飲むと思います」ときた。やるな、である。
自宅と外で飲み分けている。まあ、そういう飲み方もある。
さて、いかがだったかな。三者三様。それぞれに自分の好きなシングルモルト、飲み方を見つけて愉しんでいる。あなたも好みを見つけて、じっくりゆったりと味わってみていただきたい。
前回のこのシリーズ『25回 カウンターではバッグに注意しろ』もご一読を。