審美眼のある人、とは
上/なにを飲もうか悩んだボトルの数々。下/ラタトゥイユと生ハム(¥800)。ハーフ&ハーフといった盛り合わせる量などこちらの注文にも快く応じてくれる。 |
そして大まかに私が選んだグラスを見て、そのひとつひとつの来歴を説明され、簡単なアドバイスをいただき、大いに助かった。ところがその後、最終的に悩んでカウンターの前をウロウロとしている私を気にも留めず、尾崎氏は花を生けはじめる。ひたすら淡々と生ける姿は、私には新鮮だった。
審美眼のある人、とは尾崎氏のような人を指すのだろう。そう思った。バーテンダーとしてではなく、人として畏敬の念を抱いた。美しい花器にスタイリングされた花の姿は大きく、品格のある艶やかな美しさがあった。描いたようだ、と感じ入った記憶がある。
今回も、あの日がよみがえった。そしてしばらくすると何故か25歳の自分の日々が映像となって浮かんだ。すべて仕事でつまづいた記憶ばかりが映像となり、ひとり恥ずかしく思い、照れていた。
ただ情けなく苦い思いに陥ることがない。それはきっと尾崎氏の達人的な美しいサービスと、美酒のせいなのだろう。
アルコールが苦手な人も大丈夫
牛ホホ肉のワイン煮(¥2,300)はこちらの人気メニューだが、とがった味が一切ない、やさしく深みのある逸品だ。この料理にウイスキーは何を組み合わせようかと悩んだのだが、バーテンダーの山田武善氏と相談してドロナック15年と決めた。写真を見ていただければわかるはずだが、それが悩んだボトルの数々だ。次にはスモーキーなラフロイグ、スパイシーなグレンモーレンジあたりをあてて食べてみようと思う。
またラタトゥイユと生ハムはそれぞれ一品¥800なのだが、これをハーフ&ハーフでなんて注文にも快く応じてくれる。さらには自家製パン(¥180)もおいしい。
最後にアルコールが駄目な女性も美しいひとときを過ごせる。ノンアルコールの素敵なカクテルを愉しめるバーでもある。
すべてが尾崎氏の上質なサービスのなかにある。
ガイドサイトINDEX『ガイドおすすめのバー・東京』もご覧いただきたい。