カリブ海に浮かぶ素敵な島国
今回は旅と酒について書く。舞台はカリブ海だ。1992年2月末、私はグレナダという島国に4日間だけ滞在した。目的地はカリブ海の最南端の島国トリニダード・トバゴで、そこでSOCAミュージックとスティールドラムの音にあふれたカーニバルを取材することだったが、その前にちょっと寄り道したということになる。グレナダはトリニダード・トバゴのすぐ北にある、ほんとうに小さな島だ。
早朝の港。陽が昇ると海は青の輝きを増す。下はセント・ジョージズの市場。 |
いま思い返せば、カリブ海に浮かぶこの小国の港町が、ウイスキーとラムに関しての私のいまの飲酒スタイルを形成したといえる。
3泊したホテルは入り江の高台にあり、美しい港を一望できた。5組しか宿泊できないプチホテルで、小さなプールと、見晴台のような粗末な常設屋台的なバーがあるのみ。夜はそのバーで過ごした。3夜とも私と同じぐらいの年頃と思われたホテルのマダムが相手をしてくれた。
昼間はイギリス人の経営する大農園を見学したり、素朴な市場を歩いたり、羊のいる丘、熱帯のジャングル、白と青の世界のビーチで過ごす。港にカリビアンクルーズの豪華客船が停泊したりしているが、あまり観光化が進んでいないところが気に入った。
ヨーロッパの大金持ち、日本でも知られた大企業のオーナーの別荘が多いことでも、なんとなくこの島国の空気感というものがわかる。あえて近代化に目をつむり、ひたすらひっそりと海に浮かんでいるようなところがあった。
夕食は港のレストランで、水のように軽いカリブのビールで流し込んで済ませ、ホテルに帰ってシャワーを浴びるとすぐにバーへと行った。(次ページへつづく)