「ウイスキーにしろ、カクテルにしろ、香りを楽しみたいってお客様は多い。香水の強烈な匂いだけはこちらもどうしようもありません。横に座っている方から、席を替えてくれって言われる場合がよくあります」
彼がそう言うのを聞いて、私にも経験があることを思い出した。
以前、あるバーでのこと。カウンターで飲んでいた私の横に30前後のカップルが座った。真横は女性だった。男も女もオシャレさんだったのだが、女性は香水の強い香りまで身にまとっていた。
ウイスキーを嘗めていた私はたまらなかった。香りでもなく、匂いでもなく、クサイのである。
間の悪いことに、彼らが席に着いたせいでカウンターは満席。仕方なく我慢しようとしたのだが、無理だった。その臭さに、ウイスキーを飲む気が失せてしまう。
様子を見て、隣のカップルに気づかれないようにジェスチャーで席を替えてくれと訴えた。バーテンダーも気になっていたらしく即座に理解してくれた。ただ席を移動するのに30分以上もの時間を要した。
女性の皆さんに言っておく。化粧の濃い女性が入店して来た場合、香水もきついのではと気にかけるバーテンダーが結構いると思っていただきたい。香水はひかえめに。
なんて勝手なの!とは、その通り
ここまで読んで、「なによ、タバコやシガーで、煙モウモウで臭いのに、勝手なこと言ってんじゃないわよ」と思った人もいるはずだ。これだけタバコが毛嫌いされている世の中にあって、バーというのは愛煙家御用達といったところがある。実は私も愛煙家だ。
でもこれに関してはもう少しの我慢と思っていただきたい。いまは禁煙を謳っているバーは非常に少ない。私も一軒だけ知っているのだが、最初は客が入らなくって困った、という話を聞いた。でもね、やがては禁煙のバーだってどんどん登場すると思うよ。
煙モウモウの店と空気のキレイな店の二極化がすすむんじゃないかな。なんせアイルランドのパブだって禁煙になってるぐらいだからね、まあ、もう少し我慢していただきたい。
前回の同シリーズ『女性よ、スタンド・バーへ行こう』もご一読いただきたい。