シングルモルトとともに食の原点回帰
『里山バル 銀座竈神』。さとやまばるぎんざかまどがみ、と読む。“体を支える料理 自然茶房”で新しい食を提案しつづける叶家フードシステムズの経営になる。まったくもって大人の空間で、料理もまた大人の味といえる。
社長の柳瀬文男氏は“食育”という言葉を使って説明するのだが、ひらたく言えば先述の“体を支える料理”ということになる。素材の厳選はもちろん、調理法にいたるまで日本料理の豊かさにこだわり、栄養バランスに優れた食を提供する。だから素材本来の味わいを大切にしているため、低塩分だ。体にとても優しい。
やわらなかな照明のもとで愉しむ料理は心をも満たしてくれる。料理は素材そのものの風味が生きた、優しい味わい。 |
でも、旨い酒とともに味わうにはほどよい味つけだと思うし、口にするうちに体の負担を考えるとこの里山料理の素晴らしさがわかってくるようになる。食の原点回帰である。
日本の自然風土に育まれた素材を使った食が里山料理。この店にはかつて日本人が常食としていた惣菜を小さく盛りつけた里山タパス、そして里山素材を本格的なスペインレシピでアレンジしたスパニッシュタパスのふたつが用意されている。
今回もチーム・キャッツアイのふたりの女性とともに味わった。
タコのガリシア風里山味(¥980)、自然薯ニンニクオリーブオイル土鍋焼き(¥1,180)、たら子の薫製と刻みサラダ(¥830)の3品をボウモア12年(¥700)とともに満喫する。しつこさがなく、すべてが穏やかな安らぎの味わいに保たれている。その安らぎにアイラモルトの中でも独特の甘さを湛えたボウモアがふんわりと柔らかく包み込む。ハニーのような口溶けが料理により華やぎを与える。
いろんな酒が揃っているのだが、シングルモルトがたくさんあるのが嬉しい。しかもなんともリーズナブルな値段なのだ。マッカランやバルヴェニーの12年が最も高くて¥900。山崎や白州の12年が¥780。オーヘントッシャン10年は¥650で飲める。
チーム・キャッツアイもシングルモルトを飲みながら、安らぎの料理に納得する。女性だけでも、また30代後半からその上の年齢の夫婦で愉しめるとの意見が出た。
そして私が最も気に入ったのが鮭のシングルモルト酒浸し(¥980)だ。次ページではそれについて述べよう。(次ページへつづく)