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ウイスキー&バー/ウイスキーが「分かる」人の飲み方

12回 ウイスキーって森林浴なんだ(2ページ目)

健康ブームはなんだかヒステリックになり、少しでもマイナス・イメージのあるものは遠ざけようとする。酒もまたそのひとつ。でもね、飲み過ぎれば害だが、ほどよく付き合えばこんなに素敵な飲み物はないんだよ。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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あわただしかった一日の終わりにはウイスキーで締める。ささくれた心をまあるくして、沈んだ心を浮遊させ、すべてを優しく和ませてくれる。幸せな時は傍らで微笑んでいてくれる。
ウイスキーは液体だが、大きくて深く、柔らかい風がそよぐ森のような存在だ。

たとえコンクリートを四角に間切りした部屋であっても、ウイスキーがあればいい。樽熟成の力は、ほんとうに大きい。
ウイスキーの他にはブランデーも長期樽熟成の蒸溜酒だ。寝酒にウイスキーやブランデーを少量飲むのは安らかな眠りに誘う。

 

真に悪いものは淘汰される

人間の身体はうまくできている。肉体が疲れていると甘いものを欲するように、さまざまに機能し、知らせてくる。食の知恵というものも凄い。焼き魚に大根おろし、刺身にわさび、ほうれん草のおひたしにカツオ節など、食品栄養学の分析などされていなかった時代から、理由付けなくして試され、受け継がれた。
酒の世界でもそんな話はいろいろとある。ひとつだけ例を挙げよう。ギムレット。これは19世紀末に生まれたジンとライムジュースのカクテルだ。

大航海時代以前から、西洋人が秘薬を求めて出かけた“海のシルクロード”が存在した。紅海やインド洋を渡り、アンバーグリスやジャコウなどの秘薬を入手するためだった。それらはリキュールの材料に使われるものだった。

航海中の船員たちが貴重視したのがライム。なんとなく身体にいいと、長い航海で新鮮な野菜を摂取できない代わりにライムジュースを飲んだ。ビタミンCといった栄養素を知るはずもなく、壊血病のことすら解明されていない時代のことだから驚きだ。人間のセンサーの素晴らしさといえる。

 
ギムレット
海兵の健康を気づかって偶発的に生まれたカクテル、ギムレット。
大航海時代になると船員たちの習慣を知ったインドの港の人たちは、搾ったライムを容器に入れて売るようになる。貯蔵性を考えて、砂糖を加えていたらしい。これに目をつけたのが大英帝国海軍の軍医、ギムレット卿だったといわれている。1890年のことらしい。

当時、乗務していた海軍将校はジンをストレートか、ビターズを加える、といった飲み方をしていた。それを空きっ腹に飲むのはよくない。そこでギムレット卿がライムジュースで薄めて飲むように提唱した。
軍医の発案したジン&ライムは氷を入れロック・タイプに姿を変え、またシェークしてフォーマルに装うことでギムレットと名を変えた。

どうだろう。人間というのは身体によさそうなものを自然と口にしているものなのだ。いま古くから伝わる飲食物で、「カラダに悪そう」なんてものはほとんどないのだ。悪いものは自然淘汰され、いまに残らない。古くから伝わる酒には、それぞれによさがある。

プリン体カットなんてビールを開発することは素晴らしいことだが、飲み手が喜び過ぎて、それを片手にタレがギトギトの焼き鳥やモツ煮込みなんぞ調子に乗って食べてばかりいたら体に悪い。たまにはいいが、過ぎると駄目なのだ。
ウイスキーだって、上手に付き合えばこれほど素敵な飲み物はない。飲みながらの森林浴、試してみて欲しい。

前回の同シリーズ『年末年始、女性におすすめの酒』もお読みいただきたい。
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