自分流で愉しむ。
よく質問されるのが、カクテルに添えられたライムやレモンをどう扱えばいいか、というもの。まず結論から言う。そしてあくまでも私の飲み方を伝える。参考になればありがたい。
結論は、どうしようが勝手。ルールはない。
カクテルを飾るフルーツをデコレーション、アメリカではガーニッシュといった呼び方をする。
この飾りものも、一応のルールのようなものがある。たとえばオリーブはマティーニに代表される辛口のカクテルに。チェリーはマンハッタンといったちょっと甘口のものに。オレンジ・ジュースを使ったカクテルにはスライスしたオレンジをといったようにコーディネイトされる。
「とりあえず」のカクテルとして人気の定番にジン・トニックがある。これを例にとって話そう。
いまジン・トニックにライムやレモン、それにマドラーを付けて出すバーは少なくなった。私の知っているバーの多くは必ずこう聞いてくる。
「ライムでよろしいですか。それともレモンにしますか」
私は面倒なので、ライムと答える。
「ライムは絞って、落としますか」
落とすとはグラスの中に絞ったライムを入れるか、どうかということだ。私は、落とさなくていいですよ、と答える。
最もありがたいのは、ライムと答えた後は、何も言わずグラスの縁をライムを擦って香りづけし、そしてライムを絞って捨てて、パンパンとつくって、マドラーも添えないで出してくれる店だ。私はジン・トニックにこだわりがないし、そう好んでは飲まないので、味がジン・トニックであればいい。
バーテンダーには申し訳ないと思うのだが、私にとってこれほどこだわりのないカクテルはない。こだわりがないから、たまにすこぶるつきの旨さの一杯に出会うと、異常に感動してしまうのだが。
ジン・トニックとかウオツカ・トニックはビール代わりに飲む場合が多い。だからジンやウオツカの濃さを気にする。
「ゴクッゴクッと、ビールのように飲みたいから、ジンは通常よりちょっと少な目に入れてください」。いつもこういう注文の仕方をする。早い話、自分流で愉しめばいいのだ。
でははじめての店で、扇形にカットしたライムやマドラーが添えられてジン・トニックがでてきたらどうするか。余談が過ぎたので本題に入ろう。