『テンダー』は上田氏のバーテンダー・スピリッツが隅々にまで染み込んだ店だ。
とくにこの店のどこがいいかと聞かれれば、私は「清潔感」と答える。酒の旨さはもちろんのこと、清潔感が客に安心という信頼感を与える。トイレを見ればそれがわかる。一輪のバラ、ふかふかのハンドタオル。プロフェッショナルな仕事人としての上田氏のプライドがそこに伺える。バーテンダーのサービスとは何かを教えてくれる。
ハードシェークの達人、カクテル大会での輝かしい成績、上田氏はいろいろな面で語ることができる。だがそんなことは大したことではない、と私は勝手ながら思っている。
清潔感を印象づけるバーテンダーが何人いるだろうか。技術の高さ、接客の妙、名バーテンダーといわれる人たちにはさまざまに特性がある。40年近いバーテンダー人生を歩いてきた上田氏もまた名バーテンダーのひとりだが、技術や接客を超えたプラス・アルファ、職人としての美しさが伝わってくる数少ない人だ。
『テンダー』という店名はほんとうにふさわしいと実感する。
その仕事ぶりは他の職種、サラリーマンであっても勉強になるはずだ。若い人には背伸びしてでも、こういう店でお行儀よく飲んでごらん、と言いたい。
TENDER
東京都中央区銀座6-5-15 能楽堂ビル5階
Tel.03-3571-8343 17:00~1:00 日祝休
チャージ¥1,500、サービス料10%、ウイスキー¥1,200~、カクテル¥1,300~、キングス・バレイ¥1,600、料理¥800~
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