今回はブレンデッドウイスキーの誕生エピソードについて簡単に説明しよう。舞台は19世紀のスコットランド。
開発したのはエディンバラでグレンリヴェット(いまでも有名なモルトウイスキー)の総代理店をしていた、アンドリュー・アッシャー社だった。
2年前の2001年5月、スコットランドでアッシャー家の末裔のスチュアート・アッシャーという老人に出会ったのだが、彼の話を要約するとこうだ。
1853年、まず熟成年数の違うグレンリヴェットを各種ヴァッティング(混和)した『オールド・ヴァッテッド・グレンリヴェット』を発売した。これがヴァッテッドウイスキーの第一号となった。
そして1860年、試行錯誤の末、モルトとグレーンをブレンドした史上初のブレンデッドウイスキー『アッシャーズ』を誕生させる。
『アッシャーズ』はそれまでのウイスキーのイメージを変えた。
穏やかなグレーンウイスキーの性格が、主張の強いモルトウイスキーの性格を柔らかくし、洗練された口当たりのよい味と香りを生みだした。
このブレンデッドウイスキーの開発が、それまでスコットランドの地酒にしか過ぎなかったものをイングランドに広め、そしてスコッチウイスキーとして世界の酒となるきっかけをつくったといっていい。
エディンバラにグレーンウイスキーの蒸溜所、ノースブリティッシュ蒸溜所がある。1885年設立で、初代社長はアンドリュー・アッシャー。ここは現在もスコットランド最大のグレーン蒸溜所だ。
末裔のスチュアートと会ったついでに訪ねてみたのだが、おみやげに1980年蒸溜の20年熟成、シングル・カスク・グレーンをそこの社長にいただいた。
20年ものともなるとモルトのような力強さがある。ただ素直な性格ゆえに樽由来のバニラの香味が随分と強いが、非常に面白い一瓶である。