未成年者だった頃、好奇心からウイスキーを盗み飲みした人は多いだろう。「おとなって、とてつもない味のものを飲むんだな」と驚いたのではないだろうか。
いろんな酒を飲みこなしてみないと、奥深い味わいを理解できないはずだ。はじめはおそらく“焦げ臭く舌にピリピリきて辛い”という印象があって当然だと思う。
女性や飲酒経験年数の少ない二十代の男性とバーへ行くと、「ウイスキーを飲みたいんですが、まず何を飲んでいいのかわからない。教えてください」とよく言われる。
非常に困る。ある程度飲んだことのある人なら、新しい香味の世界へ誘ってあげられるのだが、馴染んでいない人にすすめるのは責任を感じるからだ。
長く親しんでもらいたいと思うから、適当に「あれを飲んでごらん」とは言えない。
最近は開き直って、すすめるボトルは決めている。あえて高級感のあるもので扉を開く。
必ず謳い文句のようにこう言う。「日本人なんだから、ジャパニーズ・ウイスキーのブレンデッドのいいのを飲んでみませんか」。そしてすすめるのがサントリーの『響17年』かニッカの『鶴』である。
小売価格はほぼ同じ。響17年は9,180円、鶴は9,200円の20円違い。バーでは一杯1,200円前後といったところか。
口中で訴えかけてくる香味は異なるが、どちらも円熟モルトと長期熟成グレーンの絶妙なバランスの中にまろやかなコクが感じ取れるはずだ。