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靴に使う「牛革」を深く考えてみる その4B(3ページ目)

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」では、色付けの際のスパイス的な仕上げ方法について採り上げます。いずれも1990年代以降にお馴染みになった比較的新しい方法ですが、見え方は対照的に「古い」です。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

より簡単にできるアドバン仕上げ!

アドバン仕上げ
ガラス張り革など、より一般的な革をアッパーに用いた靴でも見られる色ムラの出し方が、アドバン仕上げです。原理は意外と簡単なのですが、色の経年変化を手軽に楽しめる仕上げです。


木製家具のようなムラッ気を演出した仕上げは、何もアンティーク仕上げだけの専売特許ではありません。より一般的なアッパーの革には、別の意匠で似たような効果を狙う場合もあります。その代表例が我が国では「アドバン仕上げ」と呼ばれるもので、これは「色が浮き出る」的な意味もある英語の”Advance”を語源として、それが省略されたものだと思われます。

原理は意外と簡単で、まず鞣す過程で、一旦塗装を行った色の上にそれよりも濃い色の塗装を軽く重ねます。その後靴を作る最終段階で、バフ掛け等を施して上層の濃色を部分的に落とすのを通じて、革の表面に色ムラ出してゆくのです。アンティーク仕上げと大きく異なるのは、こちらは塗装の段階で色付けを完全に済ませてしまい、革としての完成品では色を完全な二層構造にしてしまう点です。

乳化性靴クリームが乗り難い故にアンティーク仕上げを行い難いガラス張り革に対しても、このアドバン仕上げなら容易に施すことが可能です。それ故に我が国では靴のアッパーだけでなく、靴よりも色止め処理をしっかりなされた上で、お財布等の革小物にも多用されています。上の濃色の層はクリーナーなどで比較的簡単に落とせてしまうので、「自分の色に育てる」感覚はあまり味わえないものの、色の経年変化を気軽に味わえるのは確かで、アンティーク仕上げより神経質にならずに対応できるのも、ある意味魅力かもしれません。


今回ご紹介した仕上げは、いずれも靴を履きこんで行くに従い、スピードの差こそあれ効果が薄れてしまう意匠です。靴クリームやクリーナーに気を遣うなど、対策は様々あるのですが、ただ、個人的にはそれにヤキモキしてもしょうがないかな? と思っています。時に失敗しながら色合いの出方を試行錯誤し、その積み重ねで履き手自身の手による唯一無二のアンティーク化がなされる方が、靴に断然風格が出て来るものですし、またその方が断然愉しいからです!



【「メンズシューズ基礎徹底講座」・関連リンク】
靴に使う「牛革」を深く考えてみる その1
靴に使う「牛革」を深く考えてみる その2
靴に使う「牛革」を深く考えてみる その3A
靴に使う「牛革」を深く考えてみる その3B
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