シボの種類を整理!

シボの種類や出し方を解説
靴に限らず、革製品に付いている「シボ」や「型」って、非常に多くの種類があります。ただ、それらの「種類」と「出す・付ける方法」は異なります。両者は結構混用されているので注意!

様々な靴の用途を考える上で大切な要素である、靴に用いる牛革の種類について、以前の記事では光沢が特徴の「ガラス張り革」と「エナメル革」についてお話しました。
両者とも表面を別の物質で覆うのが特徴で、「銀付き革」に比べ革本来の味わいは薄れるものの、使い方次第で大変役に素材であることは間違いないものです。

今回はそれらとは別の観点で革の表面にアクセントを加える、シボ(子母)や型の出し方について考えてみたいと思います。牛革に限らず、シボとは革を鞣した後、その表面に付く細かい凸凹を有した一種のシワのようなもので、自然に付いてしまう場合もありますが、何らかの形で人為的に形成される場合が大半です。「シボを出す・付ける方法」は幾つかあるのですが、それを解説する前に、「シボそのものの種類」をはじめにお話ししてしまいます。実は両者は相当錯綜して用いられていまして、まず後者を説明してからでないと、前者を話しても訳がサッパリ解らなくなってしまうからです。

ボックスカーフのところでお話ししたことと若干重複しますが、代表的な「シボそのものの種類」には、以下のようなものがあります。いずれも革に風合いを与えるだけでなく、その表面に傷が付き難くし、たとえ傷が付いてしまっても目立たなくさせる効果も期待できます。1.は「水シボ」とも呼ばれ、鞄の世界で言うところの「ボックスカーフ」の極上品を象徴するものです。一番有名なのは4.ですよね!
1. ウィローグレイン(Willow Grain):細かい一文字状のシボを極々軽く出したもの。
2. ボックスグレイン(Box Grain):細かい四角形状のシボを極々軽く出したもの。
3. ぺブルドグレイン(Pebbled Grain):細かい丸小石状のシボを出したもの。
4. スコッチグレイン(Scotch Grain):大麦の実粒状のやや不揃いなシボを出したもの。
   

シボの出し方の種類1:手でシボを出す「揉み革」

揉み革
革を揉むことで細かいシボを出した一例です。ご覧のように靴よりも鞄や財布等の革小物に用いられるケースが多いものの、その中でも手で揉んだものは最近ではあまり見かけなくなりました。

シボを出す方法で一番原始的なのは、人間の手でそれを創造する「揉み革」です。皮を鞣した後で、物理的に揉むことで、その表面にシボを出して仕上げた革をこう呼びます。誕生のきっかけは意外と単純で、鞣しに失敗した革を偶然手で揉んだところ、独特の表情に変化したことが第一歩となったようです。

登場当初は勿論手だけで単純に揉んでいたようですが、流石に効率が悪く、革の表面を内側にして畳み、その上に裏面がコルク等で出来た船底状の「ボーディングボード」を置いて手で揉みしごくことで、多少は効率的にシボを出すようになりました。それもあってか、この種の革を今日でも英語では”Boarded Leather”と呼びます。革をどの方向に何回畳み、何回揉むかで、出てくるシボの形状が変化する訳です。

現在では流石に機械作業が大半になりましたが、その原理は変わりません。大なり小なり革を揉みますので、必然的にそれに柔軟性が加わります。ただ、他のシボを出す方法に比べて効率が良くないこともあり、現在ではカーフ等品質の良い薄手の革にしか施されませんし、その革も鞄や財布等の革小物に用いられることが多く、靴ではあまり見かけないのが実情です。
 

シボの出し方の種類2:薬剤でシボを出す「シュリンクレザー」

シュリンクレザー
シュリンクレザーは厚みがある割に柔らかいのが特徴! 写真で質感が伝わっているかなぁ…… 用いる薬剤の成分や量等、製造技術には極めて緻密なノウハウが求められる革でもあります。

先ほどの「揉み革」には、その揉み方次第で革が素朴な表情にも洗練された雰囲気にも変化する、何とも言えない魅力を革に付加します。しかし生産効率の悪さは如何せん否定できず、特に機械を用いずに揉まれたものは貴重な存在になりつつあります。そのような中、似たような表情を出すことをそれとは全く別のプロセスで実現してしまったのが、「シュリンクレザー(Shrink Leather, Shrunken Leather)」です。

こちらは皮を鞣す途中で、文字通り化学的に収縮させることを通じ、その表面にシボを出して仕上げた革です。具体的には、鞣しの際に用いるドラムの中で、革と収斂性の強い特殊な薬剤とを合わせて回転させる等の方法でそれを作っていったりします。どのようなシボが出来上がるかは、それこそドラムの蓋を開けて結果を見てみないと解らない訳で、その辺りには表情こそ似ているものの、揉み革とまた別の非常に緻密な製造ノウハウが求められます。だからでしょうか、この種の革の評価が高いタンナーは、他の表情を持つ革でも得てして評価が高いです。

優れた品質のものは革として完成した後も非常に収縮性が強く、厚みの割には非常にソフトで弾力性の高い、身が締まりながらもフカフカな仕上がりとなります。またそれゆえ揉み革に比べると、シボの入り方が深目に出る傾向にもあるようです。紳士靴ですと、その特性を生かしてカジュアル用やカントリーユースのモノ、それにウォーキングシューズ的な要素が加味されたものに用いられることが多いです。
 

プレスしてシボを付ける型押し革!

型押し革
シボだけでなく、革の表面に表情を出すのに現在最も一般的なのが型押しです。揉み革やシュリンクレザーに比べやや硬質な表情で、近年では爬虫類系の革に似せた型押し技術も著しく進歩しています。

シボの出し方と申すよりは付け方で、現在目に触れる機会が一番多いのが、この「型押し革(Embossed Leather)」でしょう。皮を鞣した後、プレス機で加熱・加圧することを通じ、その表面に様々な型を押し付けて仕上げた革のことを指します。今回ご紹介するものの中では、様々な意味で最も生産効率が高いもので、揉んだり縮めたりしていない分カリッとハリのある雰囲気に仕上がる傾向にあります。

今「様々な意味で」と書きましたが、つまり単に最も簡単・短時間・大量に製造できるだけではない利点を、この方法は持っているのです。例えば原皮そのものの品質は大変素晴らしいのに、使用に全く問題のない細かな傷が僅かにあるような場合は、銀付き革に仕上げた上でこれを施せば、無駄なく立派に第一級品の革として使うことが可能で、それがこの種の革の元々の開発目的です。また揉み革やシュリンクレザーとなるのは原則銀付き革である一方、型押し革の場合は、ガラス張り革は勿論エナメル革にも加工が可能で、すなはち表情を付けられる革の種類も大幅に増やせるのです。

そして、本来の「シボ」以外の「型」も、型押し革として数多くの種類が世に出て受け入れられているのは、もう皆さんご存じでしょう。代表例がクロコダイルやリザード等、爬虫類の革の表情に似せて作られたもの。「本物」に比べると圧倒的に安価に出来てしまうものの、特にイタリアのタンナーの作を中心に最近ではそれと殆ど見分けの付かないレベルにまで加工技術が進んで来ました。自然保護と言う観点で見れば大いに評価したいところですが、偽物対策の視点で考えるとちょっと厄介でもあって、優れた品質だからこそ「この革は本物ではなく型押しですので」と正直な姿勢で扱われて欲しい存在です。

いかがでしたでしょうか? シボや型の「種類」とそれらを「出す・付ける方法」とは異なるのだと言うことを、今回は是非ともご理解いただければと思います。同じスコッチグレインのシボであっても、揉み革・シュリンクレザー・型押し革では種類が違うのです! 

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