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革靴の『牛革』の種類・特徴を深く考えてみる!カーフやステアとは

今回は、靴に使われる素材「牛革」の種類・特徴について解説致します。「牛の年齢や性別」による分類は、靴用の革を見極める際の始めの一歩。つま先やかかとの形状を保持し足を守ってくれている芯地も牛革製を用いますから、これ無くしては靴を語れません。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

<目次>
 

「牛革の種類・特徴」を掘り下げ!

「牛革」の種類・特徴を深く考えてみる!革靴の素材紹介

ファッション雑誌や店員さんの説明で、靴の革、特に牛革の種類について混乱してしまったこと、ありませんか? これがある程度整理できると、靴選びも更に楽しくなります!


紳士靴で通常、一番多く使われている原材料は? と問われると、「そりゃー牛の革に決まっているよ!」と大抵の方が思われるでしょう。

アッパーはもちろんのこと、ライニングやインソール、それに大地を踏みしめるアウトソールなど、確かに牛の革は一足の靴の至る所で活躍してくれる、大変頼もしい存在です。見えないところでは、つま先やかかとの形状を保持し足を守ってくれている芯地も、ある程度以上高品質な靴でしたら牛革製を用いますから、それこそこれ無くしては靴を語れない存在!

ただ、紳士靴をいざ買おうとする段階になって、売り場で店員さんから「この靴は上質な銀付きカーフを使っていますので……」とか「これは混合なめしの牛革を、今時珍しいアニリン染めで仕上げて……」とか言われて、「はっ? 一体何を指して仰っていただいているのかな?」と頭がコンガラがってしまった経験をお持ちの読者の方も、結構多いのではないでしょうか。

このような混乱は、靴に用いられる牛革について、靴を買う側もそして売る側もその分類が系統立てられずに記憶・説明しているが故の錯綜のようです。

でもこの辺りが明確に分かってくると、用途や目的、それに(ある意味一番大切な)予算に合わせた靴選びも格段に楽しくなるのも事実。まず説明の軸になる「分類の大枠」を、「皮」から鞣し工程を経て「革」になる順序に従って提示致しますと、以下のようになるかと思います。
 
  1. 牛の年齢や性別による分類
  2. 鞣しの種類による分類
  3. 加工の種類による分類
  4. 仕上げの種類による分類

この記事では、「1. 牛の年齢や性別による分類」についてお話ししますね!
 

牛革の種類:柔らかさとキメの細かさが自慢のカーフ!

カーフを用いた靴
アッパーに黒のカーフを用いたVフロントプレーントウです。ジョン・ロブ(もちろんロンドンのロブ)で1970年代初めに仕立てられたと思われる作品で、多少ヤレていますが、キメの細かさから来る「底光り」感は、正に最高・最強の一言です。
普段はファーストフード系の牛肉でも十分満足だけれど、せめて年に一度くらいは、いや二年や三年に一度でもいいから格式あるレストランで、仔牛の肉のちょっと淡白だけれど溶けるような歯ごたえを存分に味わいたい…… まあ、誰しもが思う素朴な願望です。実は靴でも同じでして、とりわけアッパーに用いられる牛革で一般的に上級にランクされ、価格も高目に取引されるのは、年齢の若い牛の原皮を用いたものになります。その代表選手がカーフです。

「カーフ(Calf)」とは厳密には、生後6カ月位までの仔牛の原皮(カーフスキン:重量が25ポンド以下の軽い原皮をスキンと呼びます)を用いた革のことを指します。革としては薄くて軽いのですが、その分キメが細かく手触りも柔らかになるのが特徴で、主に誂え靴等でアッパーとして使われます。生後3カ月までのものについては、特に「ベビーカーフ」と呼ばれ、文字通り赤ちゃんの頬のような得も言われぬ風合いとなりますが、大変繊細な革なので流石に紳士靴にはほとんど用いません。

また、生後6カ月から2年位までの牛の原皮(キップスキン)を用いた革を「キップ(Kip)」と呼びます。カーフに比べ若干厚みがあるものの、その分強度に優れるため、こちらもある程度以上の品質が求められる紳士靴のアッパーに暫し用いられますが、実は「カーフ」と「キップ」を明確に分類しているのは、どうやら我が国だけみたいです。欧米ではどちらも「カーフ」と呼ばれているのが現実で、よってインポートの靴の場合、カタログや靴箱等に「アッパーにはカーフを使用」と記載されていても、厳密にはキップを用いている場合が多々あります。まあキップであっても、柔軟性や表面のキメの細かさではカーフに全く負けず劣らずの場合が結構ありますし、実使用上はその差が大きな問題を起こす訳ではありませんので、その点はご安心の程。
 

牛革の種類:丈夫さでは絶対に負けないステア!

ステアを用いた靴
アッパーに黒のステアを用いた、リーガル永遠の定番プレーントウ2504Nです。カーフやキップに比べると柔軟性やキメ細やかさには劣りますが、その分耐久性には優れるので、タフに履かれる靴にはむしろ好都合な素材です。
仔牛って確かに柔らかいけど、「お肉食べたーっ!」っていう一種の感慨には、ちょっと欠けていない? 特に寒い時期だと、ゴロゴロ系の牛肉をシチューみたいに手間暇かけて煮込んで食べた方が、素直に「美味しい」って思うのだけれど…… なんかそんな声も聴こえてきそうです。靴用の牛革に関してもそれは似たようなもので、若いばかりが能じゃない。ある程度以上の大人の牛から出来た革も、活躍の場は大きいのです。

その代表選手が「ステア(Steer)」と呼ばれるもの。これは生後3~6ヶ月の間に去勢され(つまり食用になるということ)、かつ生後2年以上経ったオスの成牛の原皮(ステアハイド:25ポンド以上の重量がある原皮をハイドと呼びます)を用いた革のことを指します。カーフやキップに比べれば柔らかさや表面のキメの細かさは流石に劣りますが、その分厚みがあって強度に優れているのが特徴で、しかも去勢しているせいなのか、厚みやキメが原皮一枚の中で比較的揃っているので無駄なく扱いやすく、靴では最も広く利用されている革です。

ソールのように、ある程度以上の厚みや耐久性が求められる部材は当然ながら、鞣し工程以降でちょっとひと工夫することで(この辺り、本当に料理と同じなんですよ)アッパーでも大活躍していまして、一般的な革靴のそれは大抵このステアだと思っていただいて結構です。牛革にはその他、出産を経験した生後2年以上経ったメスの成牛の原皮(カウハイド)を用いた「カウ(Cow)」や、去勢されずに生後3年以上経ったオスの成牛の原皮(ブルハイド)を用いた「ブル(Bull)」等があります。が、前者はステアよりもしなやかながら部位により密度の差が大きい傾向があり、後者はステアより厚い分キメが荒く傷も多いことから、靴用にはどちらもステアに比べそれほど多くは使われていません。

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