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靴に使う「牛革」を深く考えてみる その4B(2ページ目)

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」では、色付けの際のスパイス的な仕上げ方法について採り上げます。いずれも1990年代以降にお馴染みになった比較的新しい方法ですが、見え方は対照的に「古い」です。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

木製家具にも通じるアンティーク仕上げ!

アンティーク仕上げ
最近ではすっかりお馴染みになったアンティーク仕上げです。あざとすぎるものはかえって興ざめしてしまいますが、使い込んでも手入れを欠かさなかった木製家具のような色艶は、確かに魅力的です。


ヨーロッパの田舎町に行くと、日曜日の朝に教会とか市民ホールみたいなところで骨董市が開かれているのを暫し目にします。いろいろ見ていると地元の人たちの実際の生活観念が垣間見えて、とても興味深い思いになるのですが、ふと目が行ってしまうのが、椅子とか棚とかのような木製家具です。別に著名な会社が作ったわけではないのでしょうが、どれにも新品では絶対に出しえない艶や色ムラが絶妙に出ていて、途中で何度もニスを塗り直したりワックス掛けをして、それなりに大切に使われていたのだろうなぁ…… と想像を掻き立てられてしまいます。持って帰りたい衝動にふと駆られますが、輸送費がかさむんですよね……

そんな使い込まれた木製家具のような艶や色ムラを、アッパーの革に新品の段階から意図的に出した仕上げの一つが、「アンティーク仕上げ」と呼ばれるものです。これは着色や塗装が一通り終わった革に、本来の色とは異なる色の染料や特殊な乳化性クリーム等を用いて仕上げるのを通じて、それを演出するものです。まずEdward Greenなどのイギリスの既製靴でこれを施した靴が注目を集め、今では国に関係なく、特に茶系の比較的高額な靴には半ばお約束とも申せる意匠になっています。

考えてみると、イギリスの靴のアッパーの色名ってChestnut(栗)とかDark Oak(楢・樫)、Sandalwood(白檀)それにBeechwood(ブナ)など、木の名前に由来するものが多く、微妙な色合いの違いを森や家具に用いる木材からイメージしている証拠のようです。よって両者が結びつくのは、いわば自明の理な訳です。この仕上げができるタイミングは革を鞣す過程と靴を作る最終段階との2回あり、双方で行われる場合も当然多いです。また、アルコール等を用いてもともと付いていた色を抜いたり、後者の段階でバフ掛け等で革に人為的な「焦がし」を加えるのも、広義のこの意匠に含まれます。


次のページでは、もう少し一般的なムラッ気の付け方!
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