平たい形状で最も基本的な「フラットウェルト」

ウェルトの形状でも最も平たい「フラットウェルト」

最もノーマルな「フラットウェルト」です。目付けこそ付いていますが、断面としてはほぼ平坦。内羽根式の紐靴やスリッポン等は大抵の場合、この仕様になっています。

グッドイヤー・ウェルテッド製法などの靴には不可欠なパーツである細い革を指す、ウェルトという紳士靴の部材。アッパーとアウトソールとの境界線に、靴の外周に沿うような形で付いて「出し縫い」が施されるアレですが、以前、それに施される「目付け」の違いを解説しました。視覚的には僅かな違いですが、メーカーやブランドごとの主張が何気なくこめられている部分であることがおわかりいただけたかと思います。

今回はそのウェルト自体の「断面形状」の違いについて、詳しく見て行こうと思います。ウェルトは靴の内部で「掬い縫い(つまみ縫い)」外側で「出し縫い」が施されるパーツですので、基本的には革製の(稀にプラスチック製がありますが)糸が2列縫えるだけの平たい形状で十分なのですが……。 

まず、その平たい形状である最も基本的なものをお見せしましょう。上の写真のようなものを「フラットウェルト」とか「平ウェルト」と言います。ちなみに、以前、ご紹介した「平目付け」と呼称が似ているのでご注意を。

「仕上げ」である目付けの有無は関係なく、あくまで基本形の「断面の形状」による分類ですので、当然「フラットウェルトの粗目付け」なるものも沢山存在します。シンプルな断面を有するので活用の幅が広く、内羽根式のストレートチップのようにビジネスユース・フォーマルユース向けの靴の場合は、大抵がこれです。
 

防護壁的なストームウェルト

ストームウェルト

このようにウェルトの中央部が盛り上がっているものを「ストームウェルト」と称します。一種の防護壁な訳ですが、寧ろ靴の重厚感を増すディテールと考えたほうが素直でしょうか。

では、「基本的」ではないものにはどのようなものがあるのか? その筆頭は上の写真のような「ストームウェルト」でしょう。ウェルトの中央部、ちょうどアッパーに接するか接しないかの部分に、山状の盛り上がりを設けたものをこのように称します。ストームは和訳すると「嵐」。ですのでこの命名は、正に外部の嵐のごとく迫り来るアクシデントから、少しでも靴の内部=足を守ろうとする意思表示なのかな?

確かにもともとは、ウェルトを「防護壁」形状のこの仕様とすることで、靴の防水・防塵性の補強を狙っていたようです。実際には、それ以上にアッパーの革に傷が入るのを防ぐ効果の方が高い気もしますが…… ただし今日では、靴の外観のボリュームを増すための単なる「装飾」として、このストームウェルトを用いている靴の方が圧倒的多数です。

典型的なのが外羽根式のダブルソール仕様の紐靴で、たとえカントリーユースを狙ったものではなくても、この仕様を採り入れたものが主流になっています。
 

ストームウェルトに刻みをつけた「ノッチドウェルト」にも注目

ノッチドウェルト

ストームウェルトにはこのように、上端部に刻みが入ったものが稀に見られます。この意匠を「ノッチドウェルト」と呼びます。大胆な雰囲気ですがこれもまあ、一種の装飾です。

なお、この「ストームウェルト」は、通常は上端が一直線状に連なりますが、そこに刻み(ノッチ)を付けてより装飾性を増したものも、中には存在します。この仕様を特に「ノッチドウェルト」と称します。これは見た目に相当な迫力が出ますよ!

【関連記事】

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。