FP(ファイナンシャル・プランナー)とはじめる賢い生き方

 

「手取りの年収」と「額面の年収」の違いを教えてください。

●相談者 花丸 貴司(仮名)さん(29歳) 年収450万円 会社員
12月に会社から源泉徴収票を受け取りました。今までじっくり見る機会がなかったのですが、あらためて見ると「支払金額」とか「給与所得控除後の金額」とかいろいろ記載されていて、意味がわかりません。また、「手取りの年収」や「額面の年収」は源泉徴収票から確認することはできますか?

会社員や公務員などの給与所得者は、毎年12月頃になると「給与所得の源泉徴収票」が勤務先から配布されます。これが税金関係の書類であることはなんとなく分かっているけれど、一般的な給与所得者は、勤務先が本人に代わって税金の計算をして納税してくれるので、花丸さんのようにあまり詳しく見ないという人も多いのではないでしょうか。今回は、給与所得の源泉徴収票を見る際のポイントと、家計管理に活かす方法を紹介しましょう。

源泉徴収票から読み取れること

勤務先が給与所得者本人に代わって1年間の税金(所得税)を計算し、正しい税金を納める手続きを「年末調整」といいます。給与所得者の源泉徴収票は、一言でいえば、年末調整の結果を本人に知らせるための書類です。

毎月の給料やボーナスの時にも所得税が天引きされていますが、これらはあくまでも概算の金額なので、年末調整によって、正しい税金を計算して納付します。そのため、給与所得者の源泉徴収票は、12月の最後に支給される給料もしくはボーナスの明細と同時に勤務先から受け取ることが多いのです。

それでは、給与所得の源泉徴収票の主な項目を見ていきましょう。

1.支払金額<源泉徴収票①>
毎年1月1日から12月31日までの間に支払われた給料やボーナスの合計金額が記載されます。一般的に言われている「額面年収」に該当します。従って、花丸さんの額面年収は450万円になります。通勤手当など所得税が課税されない金額は、支払金額に含まれません。

2.給与所得控除後の金額<源泉徴収票②>
給与所得者の場合、支払われた給料やボーナスなどの収入に対してそのまま税金がかかるわけではありません。個人事業主が、売上(収入)から経費を差し引いて求められる所得に対して税金がかかるのと同様に、給与所得者の場合も、給料やボーナス(収入)から、給与所得控除という概算経費のようなものを差し引いた給与所得控除後の金額(所得)に対して税金がかけられます。

給与所得控除額(平成29年分)は、以下の表によって算出します。ただし、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、表にかかわらず、所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)により、給与所得の金額を求めます。

給与所得控除後の金額を「手取り年収」と勘違いしている人がいますが、これは間違いです。花丸さんの支払金額450万円に対する給与所得控除額を上の表から計算し、給与所得控除後の金額を求めると、記載されている306万円になります。

3.所得控除の額の合計<源泉徴収票③>
所得税を課税する際に、納税者のさまざまな事情に配慮するために「所得控除」が設けられています。所得控除には、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除など納税者本人の支払いの負担を軽減するものや、配偶者控除、扶養控除等などの人的な控除があります。花丸さんの所得控除の額の合計は、本人の基礎控除38万円と社会保険料等の金額672,242円を合計した1,052,242円が記載されています。

4.源泉徴収税額<源泉徴収票④>
年末調整で正しく計算された1年間の給料やボーナスに対する所得税が源泉徴収税額として記載されています。給与所得控除後の金額から所得控除の合計の額を差し引いた金額に対し、以下の表によって算出します。

なお、平成25年から平成49年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)をあわせて申告・納付することになっています。
花丸さんの場合の源泉徴収税額は、105,300円と記載されています。

5.社会保険料等の金額<源泉徴収票⑤>
毎月の給料やボーナスから控除されている社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料など)の合計金額が記載されています。なお、「給与所得者の保険料控除申告書」に基づいて控除した社会保険料の金額及び小規模企業共済等掛金の額があればその金額も加算されます。花丸さんの場合、672,242円と記載されています。

「給与所得の源泉徴収票」だけでは手取り収入はわからない

給与所得者の源泉徴収票から、支払金額を見れば、「額面年収」を知ることができました。それでは「手取り年収」はどのように求めたらよいでしょうか。一般的に「手取り年収」とは、給料やボーナスなどの額面年収から社会保険料と税金を差し引いた金額を指し、「可処分所得」とも言われています。

ところで、給与所得者の源泉徴収票には、支払金額、社会保険料等の金額、源泉徴収税額(所得税)が記載されています。一見すると、ここから手取り年収額を計算することができるような気がしますが、手取り年収を計算する際の税金には、所得税の他に住民税も含まれます。残念ながら、給与所得の源泉徴収票には住民税の情報が記載されていないのです。

1月から12月までの住民税の金額を調べる一番手っ取り早い方法は、1月から12月までの給料明細から住民税額を計算することです。他の方法として、年に1回送られてくる住民税決定通知書(勤務先に5月から6月頃郵送され、本人に配布される)から調べることもできます。この場合、年の途中で住民税の税額が変わるので、2年間分を用意して計算する必要があります。

花丸さんの住民税を1年間分の給料明細から計算すると19万円でした。花丸さんの手取り年収を計算してみましょう。
額面年収(450万円)-社会保険料(67.2万円)-税金(所得税10.5万円+住民税19万円)=手取り年収は353.3万円となります。

手取り年収から1年間の家計予算を決めて家計を管理する

額面年収は給料やボーナスなどが支払われた金額そのものですが、実際に家計で使える金額は、額面年収から社会保険料や税金を差し引いた手取り年収です。花丸さんの場合、額面年収450万円に対し、手取り年収は353.3万円なので、約100万円の開きがあります。家計管理をする場合は、額面年収よりも手取り年収をしっかり把握しておくことが重要です。

例えば、花丸さんのケースで、1年間で50万円の貯蓄を目標とした場合、手取り年収350万円-貯蓄分50万円=300万円。つまり、1年間の家計支出予算は300万円です。ここから、生活費や住居費などの毎月の支出として、たとえば22万円かかるのであれば12か月で264万円、旅行や大きな買い物などの特別支出としてたとえば年間で36万円……といったように、予算を作っていくのです。

手取り年収を基準に家計予算を立てることで支出のペースがつかめるため、家計管理を行いやすく、また貯蓄目標も達成しやすくなります。ぜひ、挑戦してみてください。

お答えしたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)

ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者。パートナーとともに夫婦FPとして、「その人らしい幸せな人生をサポートする」をモットーに、夫婦で取り組む家計管理やライフプラン実現のためのコンサルティングを数多く手がける。All Aboutマネー「ふたりで学ぶマネー術」を連載中。

提供:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
掲載期間:2017年7月3日~2018年3月31日【PR】