FP(ファイナンシャル・プランナー)とはじめる賢い生き方

 

“44歳でマイホーム購入。35年の住宅ローンを組んで大丈夫でしょうか?

●相談者 原田俊平(仮名)さん(35歳)
家族 妻(34歳)、子ども1人(1歳)

一昨年前に結婚して、昨年、1人目の子どもが生まれました。夫婦共働きで、ある程度家計に余裕があったため、これまではあまり節約に意識することなくやってきました。現在加入している保険は「将来の貯蓄にもなるし、結婚して家族を持った時の保障も必要になる」ということで、30歳の時にX定期保険とY終身保険の2つに入りました。独身時代は貯金代わりと思い、また、結婚してしばらくは保険料もそれほど気にならなかったのですが、妻が育児休職に入り世帯全体の収入が減ると、私の毎月の生命保険料の支払い3.6万円の負担が重く感じるようになりました。
●現在加入中の生命保険(いずれも30歳時に加入、保険料は60歳迄)
1.A社:X定期保険(死亡保険金2,000万円、月額保険料6,000円、期間:10年)
2.B社:Y終身保険(死亡保険金1,000万円、月額保険料3万円、期間:終身、保険料の払込:60歳まで)

生命保険文化センターの平成28年度「生活保障に関する調査」によると、生命保険に加入している人の割合は、男性80.6%、女性81.3%で男女ともに高い水準です。20代の加入率は、男性58.2%、女性53.2%、これに対し、30代の加入率は男性84.1%、女性81.3%となり、原田さんのように30代になると生命保険に加入する人の割合が急増します。自分の加入した保険の内容を十分に理解して、自身のライフプランに適した保険に加入していれば良いのですが、その内容について、あまり理解していないという人も意外に多いのです。そこで今回は、保険見直しの基本的な考え方について解説します。

保険の基本は、生活リスクに対して備えるためのもの

生命保険会社は、多種多様な生命保険を販売しています。代表的なものとして、万が一死亡した際に遺族に対して保険金を支払う死亡保険や、病気やケガで入院したり、手術をした場合などに保険金が支払われる医療保険などがあります。いずれの場合も、死亡や病気・ケガという生活リスクに対して、保険で備えるためのものです。

従って、保険に入る場合や見直しをする場合には、どのような生活上のリスクがあり、もしそのことが起こった場合に、どのくらい家計に影響を与えるかということを念頭に置く必要があります。原田さんは、30歳の時に2つの死亡保険に加入しましたが、死亡保険金の合計は3,000万円になります。原田さんが万が一亡くなった場合に、経済的に困るような人がいるのであれば、2つの死亡保険は必要なものといえますが、独身時代の原田さんには生活を支える人がいないので、必ずしも必要なものとは言えないでしょう。もちろん、将来、家族ができた時のため、あるいは貯蓄のためという考え方もあるでしょうが、優先順位としては低いといえるでしょう。

生活リスクへの備えは、生命保険だけではない

原田さんは、一昨年結婚し、今年は子供が生まれるなど、生活を支えて行かなければならない家族ができました。「やっぱり、死亡保険に早く入っておいて良かった」と思うかもしれませんが、もう一つ考えなければならないことがあります。万が一原田さんが亡くなった場合には、遺族には、遺族年金が支給されますし、病気やケガで入院したり、手術をしたりする場合は、健康保険によって自己負担金額が抑えられています。つまり、生活リスクへの備えとして、公的年金や公的医療保険などの社会保険があるということです。さらに、会社によっては、退職金以外に会社負担で死亡保険に加入していたり、子どもが大学に入るまでの期間、育英年金を支給したり、医療費の自己負担部分を補助したりするなど、会社の福利厚生も生活リスクへの備えとなります。

原田さんの場合は、現在、奥様は育児休職をされていますが、職場復帰すれば、収入を得ることができます。原田さんに万が一のことがあっても、奥様の収入で、家計を支えることができる点も考慮しなければなりません。

必要死亡保障額の考え方

必要保障額を求める考え方の一つとして「もし、家計を支えている人に万が一のことがあった場合、残された家族が貯蓄の尽きることなく、安心して暮らしていくためには、いくらお金が必要か」です。必要保障額は、子どもがいる人は、末子が成人(または大学卒業)するまでの期間、遺族に必要な生活費や教育費等の額と、子どもが自立した後、配偶者が暮らしていくための費用等の額の合計金額と考えられます。その額から遺族年金等の社会保険で支給される額を除くと、現状での必要保障額になります。また、家族構成が変わるなどライフスタイルの変化があったり、社会保障制度の変更があるとこの額がかわってきます。そのため、定期的に今の保障で十分かチェックすることが大切です。

具体的な必要保障額を求める場合は、インターネットで公開されている必要保障額シミュレーションを活用したり、ファイナンシャル・プランナーに相談すると良いでしょう。

生命保険を見直すタイミングは?

原田さんは、結婚し、子どもが生まれ、妻が育児休職に入り、家計の収入が減ったタイミングで保険の見直しを行ないましたが、保険はどのようなタイミングで見直したら良いのでしょうか。必要保障額は、常に一定という訳ではなく、年々、変化するものです。例えば、お子様がもう一人生まれた場合は、教育費や生活費が増えるので、その分、必要保障額も増えます。また、マイホームを購入し、住宅ローンを組んだ場合、一般的には団体信用生命保険に加入し、万が一のことが起こった場合には、住宅ローンの返済が保険金によって支払われるため、住居費に対する必要保障額は大幅に減ります。また、転職や退職、起業などの就業状態の変化によっても必要保障額は増減します。

このように必要保障額は、ライフスタイルの変化によって変わります。自分の判断でしっかりと必要保障額を見積もって加入したという人も、定期的に保険の見直しをすることをお勧めします。

お答えしたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)

ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者。パートナーとともに夫婦FPとして、「その人らしい幸せな人生をサポートする」をモットーに、夫婦で取り組む家計管理やライフプラン実現のためのコンサルティングを数多く手がける。All Aboutマネー「ふたりで学ぶマネー術」を連載中。

提供:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
掲載期間:2017年7月3日~2018年3月31日【PR】