FP(ファイナンシャル・プランナー)とはじめる賢い生き方

 

「ねんきん定期便」の見方がわかりません。私がもらえる年金はいくらですか?

●相談者 山本進一(仮名)さん(50歳)
今年、50歳になり、少しずつ老後のことを考えるようになった。先日、誕生日を迎えた月に「ねんきん定期便」のハガキが送られてきて、今まではあまり中身を見ないですぐに保管してしまっていたが、今年あらためてじっくり見てみると、昨年49歳の時に送られて来たものと今年のものとで形式が変わっているようだ。表示されている年金額も、去年よりも今年の方がかなり多いように感じる。私の年金はいくらなのか?「ねんきん定期便」の見方を教えてほしい。

長寿化が進む中、老後の生活に不安を感じる人の割合は年々増えているように感じています。老後の不安を少しでも解消するためには、いくら収入があって、どのようにお金を使っていくか、といった老後の生活設計をきちんと立てることが大切です。その中で老後の収入を支えるのが、公的年金です。今回は、将来もらえる公的年金額を知る手掛かりとなる「ねんきん定期便」の見方について解説します。

そもそも「ねんきん定期便」ってどんなもの?

「ねんきん定期便」は、日本年金機構が厚生労働省の委託を受け、保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報をわかりやすい形で加入者(被保険者)に通知するものです。年金制度に加入していることや年金給付と保険料負担の関係を実感し、加入者が年金制度に対する理解を深め、国民の年金制度に対する信頼を向上させることを目的としています。

「ねんきん定期便」は、国民年金および厚生年金保険の加入者(被保険者)の誕生月に届きます(ただし、1日生まれの人は、誕生月の前月に届きます)。通常はハガキで送られてきますが、35歳・45歳・59歳の時は、封書で送られてきます。封書の「ねんきん定期便」には、年金加入記録の確認方法などを詳しく記載したパンフレットや、お知らせした年金加入記録にもれや誤りがあった場合に提出する「年金加入記録回答票」が同封されています。

今回は、通常送られてくるハガキの「ねんきん定期便」について見ていきましょう。

50歳以上と50歳未満で異なる「ねんきん定期便」の記載内容

山本さんの場合は、49歳の時と50歳の時に届いた「ねんきん定期便」の形式が変わっていて、表示されている年金額もずいぶん変わっているとのことでした。
実は、「ねんきん定期便」には、50歳以上の方用のものと、50歳未満の方用のものの2種類があるのです。

【ねんきん定期便(50歳以上の方用)】

【ねんきん定期便(50歳未満の方用)】

50歳以上の方用と50歳未満の方用を比較してみると、体裁がかなり変わっているように感じられるかもしれませんが、掲載内容は共通している部分がほとんどです。

これまでの年金加入期間【A①】【B①】
これまでの保険料納付額【A③】【B③】
最近の月別状況【A④】【B④】
これらは、共通記載事項です。

しかし、老齢年金の額については、50歳以上の方用の「ねんきん定期便」には老齢年金の見込額【A②】が記載されていますが、50歳未満の方用の「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績に応じた年金額【B②】が記載されています。

それでは、項目ごとのポイントを見ていきましょう。

1.これまでの年金加入期間……【A①】【B①】
国民年金(a)、厚生年金保険(b)、船員保険(c)の種別ごとに「ねんきん定期便」作成時点の加入期間が、月数で表示されます。国民年金の第1号被保険者の欄は、保険料を納めている期間、および保険料が免除された期間の月数が表示されます。種別ごとの加入期間の合計は「年金加入期間 合計(a+b+c)」に表示されます。

年金額には反映されないが、受給資格期間に反映される「合算対象期間」がある人は、「合算対象期間等(うち特定期間)(d)」の欄に該当月数が表示されます。そして「受給資格期間(a+b+c+d)」の欄にその合計が表示されます。

加入していた年金の種別と期間、保険料の納付期間について、記載内容に誤りがないか確認しましょう。なお、老齢年金の受取は、平成29年8月以降については、原則として120月以上の受給資格期間が必要です。

2.老齢年金の見込額……【A②】/これまでの加入実績に応じた年金額……【B②】
50歳以上の方用の場合は、現在加入している年金制度に60歳まで同じ条件で加入し続けたものと仮定して計算した老齢年金の見込額(年額)が表示されます。
一方、50歳未満の方用は、これまでの加入実績(「ねんきん定期便」でお知らせしている年金加入記録)を基に計算した老齢年金の額(年額)を表示しています。

山本さんのように49歳時点の「ねんきん定期便」に記載されているこれまでの加入実績に応じた年金額と、今回50歳でもらった「ねんきん定期便」を比較すると、11年分(49歳から50歳までの1年+50歳から60歳までの10年)が見込みの年金額として反映されるので、急に年金額が増えたように感じるのです。

なお、50歳以上の方用の老齢年金の見込額の記載方法について、厚生年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、法改正による経過措置によって、65歳より前に特別支給の老齢厚生年金がもらえる人は、年齢ごとの年金額が表示されます。

3.これまでの保険料納付額(累計額)……【A③】【B③】
年金種別ごとに本人が納付した保険料の累計額が表示されます。国民年金の付加保険料を納めている場合、付加保険料分も加算されます。前納などにより保険料が割引されている場合は、割引後の保険料が加算されています。

厚生年金保険料は、各加入者の標準報酬月額および標準賞与額に、その当時の保険料率を乗じて計算し、事業主と被保険者で折半して納めることになっていますが、加入者負担分のみが表示されています。

4.最近の月別状況……【A④】【B④】
直近の月別の加入状況が表示されます。結婚や退職などによって、年金種別に変更があった場合や、転職・転勤が多い場合、姓(名字)が変わった場合に、もれや誤りがないか確認しましょう。不明な点が見つかった場合、最寄りの年金事務所に問合せましょう。

60歳以降も働いた場合の年金額を大まかに計算する方法

山本さんに詳しくお話を伺うと、勤務している会社の再雇用制度を使い、60歳から65歳までの5年間は、年収400万円で働く予定とのことです。50歳以上の方用の「ねんきん定期便」に記載されている老齢年金の見込額は、60歳までの加入見込みによって算出されるので、60歳以降、厚生年金に加入し、保険料を納めた分が反映されません。

60歳以降も働いた場合、年金額がどのくらい増えるのでしょうか?
ここでは、大まかに計算する方法(※)を紹介します。

(※)ここでは概算を求めるために以下の計算式で算出しました。
5,500円 × 年収(百万円の位の数字)× 年数

●老齢厚生年金の増加額 = 5,500円 × 年収(百万円の位の数字)× 年数
山本さんの場合は、5,500円×4(百万円)×5年(60歳から65歳まで)=11万円/年と計算されます。

もし、50歳未満の人が65歳まで働いた場合の年金額をおおまかに試算すると、勤務する期間の平均年収を予測し、老齢厚生年金の増加額の式を用いて計算します。
また、老齢基礎年金については、19,500円×(60歳-現在の年齢)で求めます。

例えば、現在45歳の人が、60歳まで厚生年金に加入し、平均年収700万円で働いた場合、老齢厚生年金の増加額は57万7500円(5,500円×7×15)、老齢基礎年金の増加額29万2500円(19,500円×15)となります。「ねんきん定期便」に記載されている「加入実績に応じた年金額」にこの87万円を加えた金額が、将来もらえる年金の見込額となります。

※これらの計算方法は大まかなものですので、あくまでも参考としてご利用ください。

ねんきんネットで詳しい情報を知ろう!

50歳以上の方用、50歳未満の方用の両方に「お客さまのアクセスキー」が記載されています(【A⑤】【B⑤】)。この「アクセスキー」を使うと、『ねんきんネット』のユーザーIDをインターネットで即時発行することができます。

『ねんきんネット』は、インターネットを通じて自分の年金の情報を手軽に確認できるサービスです。24時間いつでもどこでも、パソコンやスマートフォンから年金情報を確認することができます。

●「ねんきんネット」でできること
・年金記録の確認
・将来の年金見込額の確認
・電子版「ねんきん定期便」の閲覧
・日本年金機構から郵送された各種通知書の確認 など

将来の年金見込額の確認では、さまざまな条件を入力し、年金見込額を試算することができます。今回、紹介した「年金見込額を大雑把に計算する方法」よりも精度が高い試算ができるので、老後の生活設計を詳細に行いたいという方は、ぜひ、ご利用ください。

また、ハガキで送られてくる「ねんきん定期便」には掲載されていない、これまでの年金加入状況なども詳しく調べることも可能です。ユーザー登録をされていない人は、「ねんきん定期便」のアクセスキーを利用して、ユーザー登録をすることをお勧めします。アクセスキーの有効期限は、ハガキが到着後、3カ月となっているので注意が必要です。

お答えしたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)

ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者。パートナーとともに夫婦FPとして、「その人らしい幸せな人生をサポートする」をモットーに、夫婦で取り組む家計管理やライフプラン実現のためのコンサルティングを数多く手がける。All Aboutマネー「ふたりで学ぶマネー術」を連載中。

提供:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
掲載期間:2017年7月3日~2018年3月31日【PR】