かつては、結婚を機に会社を辞める「結婚寿退社」が一般的な時代がありました。最近は女性にとっての第2の関門として、第1子の出産を機に退社をするかどうかが挙げられます。『第3回(2014)子育て世帯全国調査』(労働政策研究・研修機構)から、第1子出産後の母親の就業変化を見ると、就業を継続した人は42.1%、出産退職をした人は39.1%という結果でした。およそ4割の人が出産を機に退職していることがわかります。
出産退職を決めた理由は、「子育てに専念したい」という積極的なものや、「暗に会社から退職を勧められた」という消極的なものなど、さまざまでしょう。また、育児休職を取得して就業を続けても、「仕事と子育てとの両立は難しい」という理由で、育児休職からの復職後、しばらくしてから退職するケースも少なくありません。
共働きから片働きになった場合、世帯の収入は大きく減少するのが通常です。収入が減って、今まで通りの貯金ができなくなると「この先、安心して暮らしていけるかしら」と急に不安になります。
将来の不安を解消するために、出産退職をして最初にすべきことは、ライフプランを作成することです。ライフプランに合わせて、日常の生活費と同時に将来かかる費用(子どもの成長とともにかかる教育費や住まいや老後にかける費用など)を時系列に並べてみます。そして、毎年の収支(収入と支出の差額)と貯蓄残高の推移を見ます。ライフプランを作らずに家計の見直しを行っても、目標の見えない節約をしているだけで、不安は解消されません。ライフプランを作成した後に、支出と収入の見直しを行います。
支出の見直しは家計全体で行うことが大切なので、夫の収入と支出をキチンと公開してもらい、その中で見直せるものを見つけます。したがって、夫の協力が何よりも重要です。収入の見直しは、ずっと働かないで家事に専念するのか、将来、パートや派遣社員、正社員として復帰するのかなど、将来の働き方に合わせて考えてみます。
一度会社を辞めると、退職前の収入に戻すことがなかなかできないというデータもあります。短大・高専卒の生涯賃金は約1.6億円ですが、35歳で退職(勤続15年、平均年収300万円)し、子育てが落ち着いてから家計を助けるためにパート勤務(勤続10年、平均年収100万円)とした場合の賃金の合計は5,500万円で、正社員を続けた場合と比較して1億円以上の差になります。もちろん、収入面だけで子どもとの関わり方を判断するものでないことは言うまでもありません。
収入面で正社員を続ける方がメリットがあるけれども、仕事と子育ての両立が難しいのが現状です。そのような場合は、働き続けることができる環境を整えるという視点も大切です。例えば、外部サービスや便利家電など、任せられる部分はコストをかけてでも活用するという発想の転換です。ライフプランにそれらのコストを実際に入れることをお勧めします。
妻がどんなに頑張ったとしても、妻1人だけでできることには限界があります。夫婦が行っている家事・育児などの分担方法についても、出産退職を機に考えてみましょう。
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