FP(ファイナンシャル・プランナー)とはじめる賢い生き方

 

“新婚1年目です。上手に家計管理をする方法を教えてください。

●相談者 田辺聖子(仮名)さん(30歳・女性) 家族:夫
今年結婚して新婚生活を始めましたが、家計管理のことで悩んでいます。共働きでお互い忙しいので、家計簿を細かくつけるのは無理です。通帳に入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多い月もあります。お互いに生活費を出し合っているのですが、家計全体で貯金ができているのか分からないので不安です。何か良い方法はないでしょうか?

田辺さんのように、新婚生活を始めて家計管理のことで悩まれているご夫婦は多くいらっしゃいます。今までは、自分のお金だけを管理すれば良かったのですが、結婚すると、夫婦の生活費など支出項目は多くなるし、将来のことも考えて貯金もしないといけない。きちんと家計簿をつけようと思い立っても、日常の生活が何かと忙しくて、なかなか長続きしません。そして、預金通帳の残高を見ながら「今月は支出が多くなってしまったかな」とか「貯金が少し増えたかな」、と一喜一憂する状況になってしまいます。

今回は、新婚夫婦の方が忙しくてもできる家計管理の方法についてアドバイスしましょう。

支出の把握は、お金の出口をチェックしよう

家計管理をするためには、毎日家計簿をきちんとつけていることが理想だと思う人が多いのではないかと思います。けれども、家計管理で重要なことは毎日家計簿をつけることではなく、1ヶ月、1年単位で家計の収支状況を把握して、目標通りの貯金ができているかを確認し、目標通りお金が貯まっていなければ支出を見直す、ということなのです。そのためには、まず家計の支出状況を把握する必要があります。

日々家計簿をつけなくても、家計の支出を簡単に把握する方法をご紹介します。
家計から出ていくお金には、通り道(出口)が3つあります。それは、「通帳・クレジットカード・財布」です。人によって利用状況は異なりますが、通帳は家賃や公共料金の引き落とし、クレジットカードはネットショッピングや外出先での少しまとまった金額の買い物、そして財布は、日常のちょっとした買い物などが該当するでしょう。通帳もカードも明細があるので、毎日家計簿をつけなくても、明細を見れば後から家計簿を作ることができます。

問題は、財布からの支出です。レシートなどを取っておいて、後でまとめて家計簿につけるという方法もありますが、レシートを貰い忘れたり、そもそも貰えなかったりする場合もあります。
そこで、財布に入れたお金は全て「支出しているもの」として考えてみましょう。財布に入れるお金も、通帳を見ればATMからの引き出しとして記帳されています。カードからの支出も同じく、カード会社からの引き落としとして記帳されているので、結局は、家計の支出は通帳だけを見れば大まかに把握することができます。

家計の全体像を知るには夫婦で「収入・支出の情報公開」が必須

「家計全体で貯金ができているのか分からないので不安です」とありますが、これを解決する方法はシンプルです。家計全体の収入と支出を把握することです。収入は、勤労者であるならば、給料・ボーナスが預金口座に振り込まれます。共働きであれば、2人分の給与ボーナスの合計が家計に入ってきたお金になります。家計全体の支出は、夫婦の生活費の他、夫と妻それぞれの支出を、上でご紹介した簡単に把握できる方法で算出し、さらにそれらを合算します。そうすれば、家計全体の収入と支出の差、つまり貯金額を把握することができます。

なお、給料天引きで財形貯蓄などの積立てをしている場合は、その分も貯金しているものとして考えます。通帳の残高は減っていても、給料天引きの積み立てを考えると黒字ということもあるし、逆に、天引きで貯金をしていると思っていても家計で赤字、ということもあり得るのです。家計管理の不安を解消するためには、夫婦間で給料明細(収入)と支出状況についてきちんと公開することが大切なのです。

お互いの収入と支出を公開することに抵抗を感じるかもしれませんが、新婚の時にお互いに情報公開するという儀式を通り抜けなければ、時間が経つにつれて情報公開するタイミングがなくなり、いつまで経っても家計全体を把握することができず、不安は解消されません。

夫婦で家計を把握する仕組みをつくって、共同体制を取ろう!

田辺さんからの相談をみる限りでは、おひとりで家計管理をなんとかしようと気負っているようにも感じられますが、家計管理は夫婦どちらか一方が担当するのではなく、共同で行った方が負担は軽減されるのです。

例えば、1ヶ月の家計の収支を把握するために、表計算ソフトで入力フォームを作っておき、各自の収入と支出を記録する方法です。そうすれば、入力の手間も一人で行うよりもずっと軽減されますし、何よりもお互いに家計の全体像を把握できるようになります。家計の全体像が夫婦で把握できていれば、「今年はこれくらいの貯金を目標にしよう」「そのためには、生活費はこれくらいに抑えないとね」というように、目標設定や節約の意識合わせにもなります。夫婦で家計管理をするための共同体制を作ることが、新婚夫婦が最初に取り組むべきことなのです。

勇気を出して、パートナーの方に、情報公開と夫婦共同で家計管理をすることを提案してみてください。

お答えしたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)

ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者。パートナーとともに夫婦FPとして、「その人らしい幸せな人生をサポートする」をモットーに、夫婦で取り組む家計管理やライフプラン実現のためのコンサルティングを数多く手がける。All Aboutマネー「ふたりで学ぶマネー術」を連載中。

提供:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
掲載期間:2017年7月3日~2018年3月31日【PR】