FP(ファイナンシャル・プランナー)とはじめる賢い生き方

 

子どもに好きなことをやらせたい。いくらまでなら大丈夫ですか?

●相談者 大山 登(仮名)さん(39歳)
家族 妻・富士子さん(36歳)、子ども2人(孝雄 7歳、春奈 5歳)

上の子どもが小学校に入り、他の保護者と会話をしているとみな、教育に熱心で、早い時期から塾や複数の習い事に通わせている家庭が増えていると感じます。私たちも、子どもにはいろいろなことをチャレンジさせて、好きなことを見つけて欲しいし、希望する教育を受けさせたいと考えています。ただ、この先2人の子どもが大きくなると教育費の負担も大きくなるので、今のうちからしっかり貯金したいと思っていますが、将来の教育資金の準備と、いま習い事にかけても大丈夫なお金とのバランスがよくわかりません。

大山さんご夫婦のように、「子どもが小さいうちからいろいろな機会を与えて、才能や興味のある分野を伸ばしてあげたい」「子どもが、こんな習い事がしたいと言ってきたら、できるだけその希望を叶えてあげたい」と考える方も多いでしょう。しかしそこで、「通常の教育資金に加えて習い事の費用も考えると、いくらまでならお金をかけても丈夫なのか」という疑問も出てくると思います。今回は、子どもの教育資金と習い事費用の考え方について解説します。

子どもの可能性を拡げるために、家計をどうやりくりしている?

できるだけ好きな習い事をさせたいけど、その費用のやりくりに頭を抱える方も多いのが現実です。調査によると、家計に占める“おけいこ費用”は、世帯の年収に関係なく平均7.4%で、習い事をさせる上での悩みとして6割近くの人が「費用がかさむ」と回答していました。費用捻出のために工夫していることとして「食費の切り詰め」が35.1%、「自分のお小遣い減額」が20.9%と、子どものために身を削っている様子がうかがえます。
(アクサダイレクト生命「第2回 子どものおけいこ事に関する意識調査」より)

人気の習い事TOP10と、それにかかる費用は?

ところで、どのような習い事に人気があって、どのくらい費用がかかるのでしょうか?
スポーツ系の習い事と、芸術系の習い事で見てみましょう。

スポーツ系の習い事でもっとも人気の高いものは「スイミング」でした。健康や体力づくりのほかにも「万が一の時に溺れないように」という願いも込められているのでしょうか。男女差はあまりなく、約2割の子どもが習っています。月当たりの平均費用は5,900円で、他のスポーツ系の習い事と比較するとやや高めです。

芸術系の習い事でもっとも人気の高いものは「楽器の練習・レッスン」でした。全体で2割、女子は3割、男子でも1割が習っています。楽器の種類にもよりますが、月あたりの平均費用は6,700円となっています。

一つひとつの習い事は月額平均5,000円前後だとしても、例えば「スポーツ系と芸術系をひとつずつ、さらに英会話も習わせたい」など、掛け持ちの仕方によってその金額は変わります。子どもの成長にともない、部活動や受験勉強なども考えれば、習い事をする期間も変わってくるでしょう。
子どもの習い事費用について夫婦で話し合う場合は「この習い事は、何歳まで続ける可能性があるか」など、長い目で見積もっていくとよいでしょう。

子どもの教育費と習い事の関係

子どもの教育費に関する統計データとして、文部科学省による「子供の学習費調査」があります。一般的に言われている子どもの教育費は、この統計データから引用されることが多いです。
「平成26年度子供の学習費調査」より、幼稚園から高校までの1年当たりの学習費総額をみると、以下の表になります。

幼稚園(3年とする)から高校までの学習費総額の合計は、全て公立の場合は約530万円、高校から私立の場合は約700万円、中学から私立の場合は約960万円、幼稚園から高校まで全て私立の場合は約1,770万円と見積もることができます。進学ルートによって1,000万円以上の開きがあります。

この学習費の総額の内訳を見ると、学校教育費、学校給食費、学校外活動費で構成されています。

学校教育費
授業料や授業で使用する教材や実験費など、大まかにいうと、学校に支払う費用です。
学校外活動費
補助学習費とその他学校外活動費に分類されています。補助学習費は、家庭内で使用する教材、家庭教師、塾代など、学校以外の学習にかかる費用です。
その他の学校外活動費
体験学習やスポーツ、芸術などのいわゆる習い事費用です。例えば、公立に通わせている小学生の学習費総額(年間)32.1万円のうち、学校外活動費は21.9万円で、さらに補助学習費を除いた習い事費用は13.2万円になっています。月額1.2万円なので、2つくらい習い事に通わせていると推察することができます。

教育費は「いくらかかるか?」の前に、教育方針を明確に

教育費に関する統計データはあくまで、全国平均の数値です。どの進学ルートにするかによっても、教育費の総額はかなり変わります。また、例えば私立から中学校に通わせる場合でも、人気の高い学校に入学させるための塾代を考えると、平均的な補助学習費よりも多くかかるでしょう。さらに、子どもの可能性を拡げるために習い事やサマーキャンプなどのさまざまな体験学習に参加させると、学校外活動費も平均的な金額では足りなくなるかもしれません。

「子供の希望する教育や習い事をできるだけ叶えたい」というのはひとつの考え方ですが、それではどれだけ教育費がかかるか目途が立たないので、準備することができません。子供の教育費は、まず「どのような教育を受けさせたいか?」という教育方針を決め、そして、「希望する教育には、どのくらいかかるか?」という手順で考える必要があります。

上の表は、大山さんご夫婦で教育の基本方針を決め、基本方針に合わせて教育費を見積もったものです。もちろん、子どもの自主性は重んじるけれども、ある程度の方向性は親が決めておく必要はあるでしょう。大山家では「グローバル化に対応できるように視野を広げ、そして、心身ともに健康であるように育てる」というのが基本方針のようです。その結果、学校教育費、塾代、習い事費用などかなり高額になってしまいました。

ライフプランに合わせて教育費プランを考える

では、大山さんご夫妻が立てた教育費プランで、将来も問題ないのでしょうか? この答えを求めるためには、大山家のライフプランを作成し、そのライフプランの中に、教育費プランを当てはめて考えてみる必要があります。

ライフプランは、いつ(何歳の時)、何にどれくらいかかりそうか、収入や支出はどうなっていくのか、時系列的に予測を立てるものです。教育費も、ライフプランの中の重要な要素です。

教育プランを盛り込んだライフプランを作成し、支出の重なり、家計が赤字になりそうだなど問題が見つかった場合は教育プランを見直すのではなく、家計全体を見直す視点も大切です。立てた教育方針に従って、子どもの教育を充実させることを実現するためには、家計の収入を増やすために夫婦の働き方をどうするか、あるいは、今の生活費を見直して教育費を捻出することができるか、など、夫婦で話し合うことが大切です。

「子どもの教育費はいくらまでなら大丈夫か?」という視点ではなく、「子どもに受けさせたい教育を自分たちでどう実現するか?」という視点で、考えてみてはいかがでしょうか。

お答えしたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)

ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者。パートナーとともに夫婦FPとして、「その人らしい幸せな人生をサポートする」をモットーに、夫婦で取り組む家計管理やライフプラン実現のためのコンサルティングを数多く手がける。All Aboutマネー「ふたりで学ぶマネー術」を連載中。

提供:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
掲載期間:2017年7月3日~2018年3月31日【PR】