マンションの保険、戸建てと異なる注意点とは
マンションは戸建てと違って、諸々の決めごとを自分だけの意思で進めることができません。考え方や環境の異なる様々な所有者や居住者がいるため、意思決定もスムーズにいかないことがあります。戸建てとは異なる、マンションの保険の特徴と注意点とは
今回はそんな「マンション保険」について取り上げます。マンションならではの特徴を押さえながら、マンション保険の考え方や比較のポイントなどを解説していきましょう。
<目次>
マンション保険の契約方法、その特徴は?
マンション保険は、まず契約の仕方から戸建てと異なります。通常は「専有部分」と「共用部分」に分け、それぞれ別に保険の契約をします。専有部分は所有者自身が保険を契約しますが、共用部分については、管理組合が一括して保険を契約するのが一般的です。ただし、古いマンションで管理組合が機能していない場合などでは一括せず、個々の所有者が専有部分に共用部分の金額も付加して契約されていることもあります。
専有部分で保険契約するときの保険金額(=契約金額)は、マンションの購入価格よりずっと低くなります。共用部分や土地の部分の金額は差し引いて計算するためです。
マンション管理組合の運営状況にも左右される
マンション管理組合で、適正な保険に契約するためには大切なことがあります。保険と直接関係ありませんが、マンション管理組合の運営がきちんとされ、適正なマンション管理がされていることは実は大変重要なことなのです。
多くの所有者がこういったことを意識していくことが、マンションという資産の維持にも繋がります。適正な管理組合の運営がされているところは、マンションの保険についても明確な考えのもとに加入しているケースが多く見られます。
また、専有部分については、自分の考える必要な保険に加入できますが、共用部分はみなの話し合いで決めるというのも大きな特徴です。
保険加入の際に考えたいマンションならではのリスクは?
マンションにはどのような危険があるのでしょうか? 住宅を購入したら火災や地震が心配だから火災保険に加入する、という人は多いでしょうが、考えられるリスクはそれだけではありません。具体的に挙げてみましょう。- 火事・爆発
- 自然災害(台風・落雷・風水害・雪災・雹災・土砂災害など)
- 地震・噴火・津波
- 漏水
- 機械設備・共有部分の設備等の事故
- 施設の破損
- 第三者に対する損害賠償事故
- 管理組合対居住者又は居住者同士の損害賠償事故
どれも気になる事故や災害ですが、とくに第三者が相手になる損害賠償事故(例えば外壁が崩れて通行人がケガをした)は、被害者・加害者の関係になるので処理が大変です。
マンションは構造上、木造の戸建てなどに比べると、風災や雪災などの自然災害や火災などには強いのが特徴です。近年は地震も含めた自然災害が多いので、マンションの立地も含めてリスクを確認することが必要です。
また、漏水事故については圧倒的に多く発生します。漏水事故の場合、被害者と加害者の関係がマンションの中で発生します。同じ居住空間の中で被害者と加害者の関係が出てくると、人間関係も絡んでなおさら厄介なこともあります。
また、専有部分と共用部分でもリスクの大きさは同じではありません。水害などは専有部分について低層階でなければ不要になるケースが多いでしょうが、共用部分ではマンション全体なので必要性が異なります。
マンションならではのリスクに備える保険は?
前述のリスクを踏まえて具体的にどのような保険商品で対応したらいいのでしょうか。主なものを挙げてみます。以前と異なり、現在は7のように、管理組合でマンションの共用部分などにつける専用の火災保険が中心です(地震等を除くほとんどの補償をカバーする)。現状は各損保会社の管理組合専用の保険を使い、オプションなどで必要な補償を付加したり、不要な補償を外したりします。
一般的に管理組合で共用部分につける火災保険は、2の地震保険を除いて上記の1~6がセットになっているイメージでいてください。ですからどの保険をというよりは、どこの保険会社の管理組合用の保険に加入するかです。
専有部分の保険については、個々の所有者が加入する形になりますが、現在では損害保険会社ごとに火災保険は一律の内容ではありません。必要な補償を選んだり、免責金額(自己負担)を自分で選んで設定できるものも増えています。
また最近では2015年10月に火災保険の値上げ(改定)、2019年10月にも大手損保を中心に火災保険の改定がありました。さらに2021年にも次の改定が見込まれている状況です。
保険料について、M構造(マンションが該当)は地域差はあるものの、全国平均では引き上げの改定です。これは水漏れ事故が近年増えたことによるものです。80~90年代に大量供給されたマンションの設備が古くなってきていることなどが、主な原因の一つです。もちろん火災保険全体では、多発する自然災害が大きく影響しています。
マンション保険を選ぶポイントは?
マンション保険を選ぶ際、商品性はもちろんですが、どの損害保険会社にするかも大切です。次の点を考えて決める必要があります。
- どこの保険会社、保険代理店にするか
- 保険期間はどのくらいにするのか(現在は最長10年。長期一括払いにするほど保険料は安い)
- どんな補償が必要か、あるいは必要でないか
- 免責金額(自己負担額)の設定をどうするか
以前は、積立マンション保険に加入していた管理組合が多かったこともありました。積立の予定利率も良かった時は有利な選択でした。預けておけば保険でもそれなりにお金は増えましたし、昔はどこで加入しても同じですからあれもこれも「選ぶ」必要がありませんでした。ところが今はそうもいきません。
戸数の多いマンションで年数が経てば積立金も貯まり、動かす資金も数千万~億単位になります。またマンション管理組合の共用部分の保険は積立もないわけではありませんが、今は掛け捨てのタイプが中心になっています。
マンション保険は特に共用部分に注意
マンションの漏水事故が増えているという話をしましたが、特に共用部分の保険料は以前よりもかなり上昇傾向です。築年数が古いほど漏水の発生頻度が高くなるので、2015年10月の改定前後を契機に、損保各社が築年数別の料率区分(古いほど保険料が高い)を導入し始めています。また、築年数の古いマンションの共用部分の保険を、引き受けない損保も出始めていました。現在は契約引き受けの拒否までは個別の事情を除けないでしょうが、一律5万円の免責金額(自己負担額)を設定する、保険期間は5年までなど、古いマンションほど共用部分の保険の制限を受けることもあります。
マンションにかかる火災保険料は上昇傾向です。火災保険や地震保険もこの5年程度の間に何度も改定されており、いずれも次の改定が見込まれています。そのため改定動向にも気をつける必要があります。
マンションの保険はどんどん変わっていきます。その上で何を選ぶか考えてみましょう。今の状況をどう考えて、何を選ぶかです。共用部分の保険も築年数がある程度経っていても、管理の状態で保険料を割り引く商品もでてきています。
何度も言いますが、マンションによって置かれた環境や状況は異なりますから「こうすれば間違いない!」という答えはありません。特に共用部分の保険については、自分たちのマンションには、何が必要で何が必要でないのかをしっかり話し合って方向性を決めましょう。
地震保険や火災保険の改定動向、現在の契約の満期日、築年数、事故の有無など共用部分の保険については色々関わってきます。満期までのんびりせず、こうした動きを踏まえて、情報収集しながら早めに動いて方向性を検討してください。
専有部分、共用部分いずれにも言えることですが、特に共用部分では重要です。繰り返しになりますが、適正なマンション管理を心掛けてください。
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