世界遺産/未来の世界遺産

未来の世界遺産1 ナミブ砂漠(2ページ目)

世界遺産ではないすばらしい場所を案内する「未来の世界遺産」Vol.1は、ナミビアの暫定遺産ナミブ砂漠。世界一セクシーなアプリコット色のデューン(砂丘)と、死の砂漠に生きる豊かな生態系を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

生と死が同居するナミブ砂漠の生態系

ソサスブレイ
世界最大のデューン、ソサスブレイの風紋。実はデューン自体も巨大な風紋だ。
ナミブをナミブたらしめているのはその霧だ。寒流のベンガル海流から吹き寄せる海風が濃霧をもたらし、砂漠とこの霧が独特の生態系を育んでいる。昆虫たちは、あるものは体を霧の方向に広げて水を集め、あるものは砂の溝を作って霧を集める。また、樹齢2,000年を超えるウェルウィッチア(サバクオモト)やある種のトカゲなどは、体内に数週間も水を貯えることができ、数週に一度の霧や雨で生活できるシステムを備えている。

また、これらの昆虫や植物をエサとする捕食動物や昆虫も独自の進化を遂げており、たとえばウェルウィッチアの水分しか飲まないカメムシなども存在する。もちろんどちらもナミブ砂漠以外には見られない固有種だ。これ以外にもナミブ砂漠ではダチョウやフラミンゴ、オットセイ、スプリングボック、オリックスなど多数の動物を見ることができる。

オリックス
木陰で休むオリックス。ナミブ砂漠では驚くほど多くの動植物を見ることができる。
ナミブ砂漠には数千年前から多くの少数民族が暮らしており、サン人やヒンバ人などが、いまだ独自の生活を守って暮らしている。砂漠に暮らすサン人がそれほど貧しいかというと、そうでもないようだ。ある文化人類学者の調査では、カラハリ砂漠に住むサン人の1日の平均労働時間はわずか2時間。対して日本人は6時間半である。

ナミブは現地の言葉で「何もない」。しかし、死の砂漠でありながら、実はどこよりも豊かな生態系を誇る生命の楽園でもある。豊かな自然と文化を誇るナミブ砂漠は複合遺産「Southern Namib Erg」としてナミビアの暫定遺産にリストされ、世界遺産への登録を待っている。

枯れた湖
アプリコットのデューンと枯れた湖。
【未来の世界遺産・基本データ】
名称:南ナミブ砂漠 →2013年「ナミブ砂海」で世界遺産登録
Southern Namib Erg
国名:ナミビア共和国
暫定遺産登録年と登録基準:2002年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(i)(ii)(iii)(iv)
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