「失恋やココロがキズついたときはぁ、友情と文化とセックスしかないっす」と登場人物に語らせたのはカリスマ漫画家の岡崎京子。なかなかの名言ではありますが、友情とセックスに関しては残念ながらお相手が必要。孤独に真摯に自分と向き合うちょっぴり大人なあなたのために、あるいは「文化だけたりないっす!」という魅力的なあなたのために、『辛いときを乗り切るフランス語アンソロジー』をお送りいたしましょう。

生きることってくだらない?

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漫画版『未来のイヴ』?仏訳もでている『ヘルタースケルター』
それでは、全くの独断ではありますが、まずは、アレンジの多さという点では右にでるものはないこの一節からご紹介いたしましょう。

Vivre ? Les serviteurs feront cela pour nous.
(生きるだって?そんなことは召し使いどもがやってくれるさ。)

発言者は、『未来のイヴ』の作者として知る人ぞ知るフランス象徴主義の作家Auguste Villiers de l'Isle-Adam(オーギュスト・ヴィリエ・ド・リラダン)。彼の著作『Axel』(『アクセル』)からの引用で、かなりの有名フレーズであります。

使われているシチュエーションからみれば、美貌の貴族Axelが愛のために自殺しようとする際の台詞ですので、実際のところことごとく暗いもの。先ほど話題にのぼった岡崎京子女史の漫画『Melody でっかい恋のメロディ』の中でも、こんな風に引用されています。

「『生きることなんて召し使いにまかせろ』とリラダンは言ったわ そのとおりね でも現実にはあたしが召し使いなんだわ 生きるってめんどうね」

ん~、やはり暗めの発言。ところが、この一見後ろ向き風の台詞、不思議なことに、解釈のしようによってはたいへん「元気づけられる」魔法の言葉に変身いたします。

どうせなら、ご主人様も召し使いもやってしまおうではないか!

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どんなに苦しいときでも肉体は健気に酸素を追い求める
人間というものは不思議なもので、頭脳が「死」を思いつめるほどの深刻な問題に直面しているときでも、肉体は「生きること」にそれこそ一生懸命。無意識にひたすら酸素をおいもとめているものです。まずは、わたしたちがおかれているこの「生物としての人間」という矛盾した状況をコミカルに受け入れてしまいましょう。

次に、人間とは、ご主人様も召し使いも住んでいるいわば「お屋敷」のようなものと考えてください。「私」は私自身のご主人様でもあり、召し使いでもある。

そして仕上げに、リラダン氏の魔法のお言葉をお砂糖のようにふりかけてみましょう。たちまち、一見せせこましくも豊かな新しい自分に出会えます。

「年金の心配?そんなことは召し使いにまかせておけ!」と言いながら、堅実に積み立て。「残業?そんなものは……」とつぶやきながらのサービス残業。

こんなアレンジを加えると、リラダン氏からとび蹴りをくらうかもしれませんが、このいわば生活するためにせせこましく生きる自分と、崇高な精神をもつ自分をうまくまぜあわせることで、ふてぶてしい精神がはぐくまれ、繊細なあなたのココロの中にも奇妙なバランス感覚がうまれてきます。

ココロがキズつくですって?そんなことは召し使いにまかせておきましょう。

次ページでは、症状別「ココロに効くお言葉」アンソロジーをお届けしいたします。