café(カフェ)やgarçon(ギャルソン)のように、日本でもメジャーなフランス語の中には、文字の上や下になにやら記号のようなものがついていますよね。これらは「綴り字記号」(Signes orthographiques)と呼ばれるもので、忘れられがちではありますが、それがあるために「なんだかフランス語っぽい!」というオーラを放っているフランス語の名脇役でもあります。今回は、これらの愛すべき「綴り字記号」とお友達になるべくお勉強に励んでみましょう。
 

フランス語の「綴り字記号」ってどんな種類があるの?

まず最初に、「綴り字記号」の種類についてみてみましょう。
 
  • 「é 」 : accent aigu(アクサン・テギュ)
  • 「à,è,ù 」 : accent grave(アクサン・グラーヴ)
  • 「â,î,û,ê,ô」 : accent circonflexe(アクサン・スィルコンフレックス)
  • 「ï ,ü,ë」 : tréma(トレマ)
  • 「ç」 : cédille(セディーユ)
  • 「'」 : apostrophe(アポストロフ)
  • 「-」 :trait d'union (トレ・デュニオン)

一般的にフランス語の「綴り字記号」と見なされているものは上記の7種類です。それでは、ちょっと「綴り字記号」についての理解力を診断するテストがあるフランス語のサイトFrançais correctif の診断ページで復習とまいりましょう。「綴り字記号」でないと思うものの上をクリックしてみてください。「Bravo!」と出れば正解です

いかがでしたか? それでは、「綴り字記号」について一つ一つみてみましょう。アクサンテギュとは「e」の上にくっついて、発音を変える記号
 

アクサンテギュとは「e」の上にくっついて、発音を変える記号

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看板などでも目をひく綴り字記号
まずは、上の3つaccent aigu(アクサン・テギュ)、accent grave(アクサン・グラーヴ)、accent circonflexe(アクサン・スィルコンフレックス)がアルファべの「e」の上につくとどうなるか?ということから話をはじめたいと思います。

フランス語の「e」は、アルファベット読みすると、「ウ」となります。この「e」の読み方は複雑なので、いろいろ読みの規則があり、「ウ」と読んだり「エ」と読んだり、発音しなかったりとかいうパターンがあるのですが、この「e」の上にaccent aiguをつけて、「é」と表記すると読み方は「エ」となります。café(カフェ/コーヒー)、opéra(オペラ)などがその例です。このaccent aiguは「e」の上にしかつきません。

また、「e」の上に他のアクサンがついて「è」、「ê」となった場合にも、père(ペール/父)、tête(テット/頭)という風に、発音は日本語で言えば同様に「エ」となります。

ただし、フランス語では、前者は[e]という発音記号で、e fermé(狭いエ)、後者は[ε]という発音記号で、e ouvert (広いエ)と区別されます。豊富な音声ファイルがうれしいLanguage guide.org のページで、音の違いが聞けますので聞き比べてみましょう。

いかがでしたか? 最初はちょっと聞き分けにくいかもしれませんね。[e]の方は日本語の「イ」の口の形のように口の両端を左右にひっぱるようにして「エ」という音をだします。[ε]の方は、横ではなくあごと舌を下にひっぱるような感じで「エ」と発音するとうまくいきます。[e]は日本語の「エ」より狭く、[ε]は日本語の「エ」より広い感じです。

ちなみに、sakéとか、karaokéのようにすでにフランス語になっている日本語は、accent aiguで表記されています。まあ、「細かいことはいいわ。」とおっしゃられる方は、「e」の上になにかしらくっついていたら「エ」と発音すると覚えておきましょう。

次ページは、アクサン・グラーヴ、アクサン・スィルコンフレックスについてのお話です。
 

同音異義語の識別に役立っているアクサン・グラーヴ

次に、accent grave(アクサン・グラーヴ)についてみてみましょう。accent graveが、「e」の上につくと発音が変わることは既に述べましたが、「e」以外にaccent graveがつく文字には、「à」と「ù」があります。

この2つの文字につくaccent graveの主な役割は、先ほどみたような発音の変化ではなく、同音異義語(homonyme)の識別です。つまり、アクサンがついている場合とついていない場合で全く違う意味になってしまう言葉がフランス語にはあるというわけです。双子を区別するのに、マジックでほくろをつけた?みたいなもんですね。ちょっと例をあげてみましょう。

有名なところでは、「~へ」などという意味を表す前置詞のà(ア)と、「持っている」という意味の動詞avoirが活用した形のa(ア)、英語のtheにあたる定冠詞のla(ラ)と「そこ」という意味をもつ副詞の(ラ)、英語のorにあたるou(ウ)とwhereの意味をもつ疑問副詞のなどがあります。
 

歴史の生き証人アクサン・スィルコンフレックス

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Herdiの名曲。クリックして試聴してみよう!
お次は、お山の形のaccent circonflexe(アクサン・スィルコンフレックス)。長い名前ですが、私は初めてフランス語をならったときから、実は、この言葉の発音があまりにもフランス語っぽいのでaccent circonflexe様と呼びたいくらい好きです。

日本でも人気の高いフレンチポップスにFrançoise Hardiの『Comment te dire adieu ?』(さよならを教えて)というのがありますが、鬼才Serge Gainsbourgが歌詞をてがけたこの作品には、「X」で韻をふむというものすごい芸当が隠されています。どうでもいいのですが、このメロディーにのせて、歌詞をaccent circonflexeばっかりにして替え歌で歌うと、あまりにもそれらしいので笑えます。お暇な方は是非試してみてください。

それはさておき、このaccent circonflexeですが、このアクサンは「â,î,û,ê,ô」と5つの母音につきます。役割としては、cote(コット/相場)、côte(コート/あばら骨)とaccent aigu(アクサン・テギュ)のように発音を変えるもの、また、tache(タッシュ/汚れ)、tâche(タッシュ/任務)とaccent grave(アクサン・グラーヴ)のように、同音異義の識別に役立っているものなど、いろいろです。

結構ややこしいので、フランス人向けの本にも、château(シャトー/城)、gâteau(ガトー/お菓子)には、accent circonflexeはつくが、bateau(バトー/船)にはつかないので注意!みたいな文章がのっていたりします。こうなると日本人にはお手上げという気もしますよね。

なんだか、ややこしくて嫌な感じなので、もっとaccent circonflexeとお近づきになるために、accent circonflexeの起源についてお話をしてみましょう。例えばフランス語では病院のことをhôpital(オピタル)と言います。しかし、かつて、フランス語では病院のことを英語のようにhospitalと表記しておりました。つまり、「o」の後に「s」が存在していたわけですね。消えてしまった「s」の代わりに、その前の母音にお山の形のaccent circonflexeをつけたというわけです。forêt(フォレ/森)も、元がforestですから同じです。

亡き友人の代わりに存在し続けるaccent circonflexe。発音の美しさもさることながら、なかなか優美な精神の持ち主です。

その他の綴り字記号に関しては、次号でご紹介いたします。お楽しみに!

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