シリーズ「綴り字記号の基本をマスター」の前編では、「アクサンとお近づきになる」と題して、フランス語のアクサンについてのお勉強をしました。後編は、いわゆる「アクサン」とよばれるもの以外の4つの綴り字記号「ï ,ü,ë」 : tréma(トレマ)、「ç」 : cédille(セディーユ)、「'」 : apostrophe(アポストロフ)、「-」 :trait d'union(トレ・デュニオン)にご登場いただきましょう。

「てんてん」は別れを惜しむ涙の痕(あと)?

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二人の仲をひきさくトレマ
最初は、「てんてん」ことtréma(トレマ)です。このtrémaに関しては、以前の記事「『ノエル』で学ぶフランス語」の中で、簡単に説明いたしましたので、すでに記事を読んでいただいた方なら、「てんてん」ではなく「トレマ」であるということはお分かりいただけていると思います。

それでは、もう少し詳しく解説いたしましょう。まず、このtrémaですが、この綴り字記号は、「ï ,ü,ë」の3つの母音にのみつきます。フランス語には2個以上の母音が組み合わさって一つの音をつくる複母音字(Lettres-voyelles composées)というものがあり、記事「フランスの小学生風に『文字と音』を学ぶ!」でもいくつか例を示したように、例えば「ai」や「ei」は「エ」、「au」や「eau」は「オ」、「ou」は「ウ」と読みます。

この、Lettres-voyelles composéesの読み方を「アイ」、「エイ」などと日本語風に母音を一つ一つ切って発音してくださいとお願いするのが、trémaの大事なお仕事。話をわかりやすくするために、すでに「フランス語」になってしまった「日本語」で例をあげてみましょう。

例えば「俳句」という言葉ですが、これは、フランス語ではhを発音しないので、「アイク」と言います。ローマ字表記すると「haiku」ですよね。このローマ字表記された単語をそのままフランス語風に発音すると、「ai」は「エ」と読みますから、「エク」となってしまいます。そこで、trémaに登場していただき、「haïku」と表記することで、「アイク」という発音になるというわけです。

フランス・ロマン主義の先駆者であるスタール夫人(Madame de Staël/マダム ドゥ スタール)のように、固有名詞中にある「ë」の中には母音を切って発音しないという例外的なtrémaもありますが、一般的なtrémaは、かたい絆で結ばれていた二つの母音を離ればなれにしてしまうもの。別離を悲しむ母音たちの涙の痕がtrémaの「てんてん」だとロマンチックに覚えてみてはいかがでしょうか。

「ひげ」で「差」がつくいい男!? セディーユ

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「ひげ」で発音を変えるセディーユ
それでは、「おひげ」が自慢のcédille(セディーユ)君に登場していただきましょう。フランス語(le français/ル フランセ)という言葉自体にくっついているくらいですから、「フランス語」にはなくてはならない綴り字記号という感じがします。

このcédilleは、母音「a, o, u」の前にあるアルファべの「c」だけがつけることのできる「おひげ」で、「ça、ço、çu」の3文字をつくります。しかも、普通の「ca、co、cu」と読み方の「差」をつけたいときにだけ使います。もう少し、真面目に説明しますね。

フランス語で、「ca、co、cu」はそれぞれ「カ、コ、キュ」と読みます。ブランド好きの方なら、ココ・シャネル(Coco Chanel)と読むのをご存じでしょう。また、コカ・コーラがお好きな方は、フランス語でCoca(コカ)を注文された方もいらっしゃると思います。

では、これらの文字にcédilleがくっつくとどうなるでしょうか?「カ行」が「サ行」に変わって、「ça、ço、çu」(サ、ソ、スュ)という読みになります。cédilleがくっつくと「サ行」になるので、「ひげ」で「差」がつくというわけです。読み方が「サ行」変わった例では、日本では、garçon(ギャルソン/男の子)という単語が有名ですよね。

発音記号で言うと、[k]が[s]に変わります。「c」におひげがついた「ç」という文字。よくよくみると、頭でっかちではありますが「s」に見えなくもありません。「c」がおひげをつけて、「s」に化けたと思えば簡単に覚えられますね。

次ページは、アポストロフ、トレ・デュニオンについてのお話です。