超高級カラオケ
クレジットカードで会計を |
女のリードで、大通りから横道に入ってとあるビルに入って行った。エレベーターの中で、女にキスでもしようと思ったがさりげなく拒絶された。拍子抜けしてエレベーターを降りると女が革張りのドアを開けて裕二を招き入れた。そこは別世界のようだった。豪華というよりゴージャスという感じで、かなり高価なインテリアと広い空間が非日常的だった。ごく普通のカラオケ店を考えていたので意外でもあった。
ソファに深々と腰を下ろして周りを見回すと、心の奥底で(ヤバイんじゃないか)という気持ちが湧き上がった。しかし、一方で(こういうこともアリだろ。多少高くたってかまうもんか)とも感じていた。ここでも酒を飲んだ。どんどん飲まされた。トイレにも何度も行ったが、席に戻るとまた酒を飲んだ。すでに一種の浮遊状態のようにすべてが現実感を失っていた。激しい眠気に襲われたが、眠り込んではいけないとわずかな理性が残ってはいた。
女が店の者と何か話してから支払いをうながしてきた。現金はあまりなかったので、クレジットカードを出した。カードはどこかに持っていかれたが、しばらくすると戻ってきた。使えなかったらしく、女が「別のカードを出して」と言った。限度額を超えていたカードだったのか。財布の中にはもう一枚のカードが入っている。ぐらぐらと揺れる体をなんとか保ちながら、おぼつかない手で財布を探り、カードを取り出した。女の手が伸びてカードは持ち去られた。
暗証番号を押す機械を持ってこられ、やはりおぼつかない指で番号を押した。不思議なことだが、暗証番号は忘れずにいたのだ。しばらくするとカードの利用明細書を持ってきたのでそのまま上着のポケットに入れた。金額を確かめることはしなかった。酔っていたせいか、気が大きくなっていたのか、多少値が張ることは仕方ないとあきらめの気持ちもどこかにあったことは事実だ。どこかで(10万円くらいはしょうがないだろう)と思っていたかもしれない。
ほとんど泥酔といえる状態で、どのようにしてその店を出たのか覚えていない。はたから見たら文字通りの酔っ払いだっただろう。どうやって自宅に戻ったのか。おそらく始発電車だったと思う。自分の帰巣本能に感心する。眠った記憶もあまりないまま、妻の声に会社に行かねばならない時間に起こされた。激しい頭痛と抜けきらない酒のせいで揺れる体で昨夜の上着のポケットに手を入れた。
一瞬で目が覚めた。とんでもない金額のクレジットカードの利用明細が何枚もあったのだった。もちろん、前後不覚になるほど酒を飲んだことが敗因だが、単なる酔いだけではないような感覚だった。裕二は目を閉じて必死で昨夜のことを思い出そうとした。
実録!Tokyo ぼったくり被害【後編】に続く。
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