ウイスキービギナーにとっての最高の入門書
『絵とマンガでわかる ウイスキー1年目の教科書』と著者の佐々木太一氏
サントリーのウイスキー伝道師として、蒸溜所のPRやさまざまなセミナーの講師を務め、ウイスキーの啓蒙活動に注力している佐々木太一氏がウイスキー初心者のための教科書を上梓した。
『絵とマンガでわかる ウイスキー1年目の教科書』(KADOKAWA刊・¥1,870税込価格)のタイトルにあるように、ウイスキーを楽しく味わうための基礎知識をイラストやマンガを織り込みながら解説してある。ちょっとしたウンチクを軽快に読み取ることができる。
ウイスキーとは、ウイスキーの味わい方、世界5大ウイスキー飲み比べ、蒸溜所への誘い、ジャパニーズウイスキーの未来、バーへの誘い、スコットランド蒸溜所巡りなど盛り沢山の内容で、それぞれのコンテンツがとてもわかりやすく述べられている。
長年にわたり佐々木氏と親交があるわたしは、彼のウイスキー愛、ウイスキーに対しての真摯な姿勢、そして優しさがそのまま投影された著書だと感じ入っている。ビギナーの方たちにとって最高のウイスキー入門書といえよう。正直に言えば、ウイスキーに親しむには、この本の内容だけで十分のような気がする。
蛇足ではあるが、わたしのウイスキー仲間で、佐々木氏はいちばんの高身長である。彼は身長194センチ。“タイっちゃん”と並んでの立ち話はかなり疲れる。わたしとは20センチ近く差がある。仰ぎ見て話すので首が痛くなる。別れた後に首をもみほぐしながら、“おお、今日はタイっちゃんと会った”と他の誰よりも印象に残る。しばらくして彼とウイスキーの何の話をしたかを想い出す。これが毎度のことである。
佐々木氏は1971年生まれ。現在、サントリー株式会社スピリッツカンパニー ウイスキー事業部シニアスペシャリストの立場にあるが、かつてはアスリート、バレーボール選手であった。学生時代に日本代表に選出され、V・リーグのサントリーサンバーズに所属してからも代表として活躍した。とくに1990年代は華々しいものがあった。
そして2005年に引退。元日本代表は指導者を目指すことなくサントリーの営業職に就く。33歳にしてゼロから本格的に酒の勉強をスタートさせたのである。そこからウイスキーのスペシャリストへと飛躍していった。
わたしは2007年にバレーボールの元日本代表がウイスキーを学んでいることを人伝に知り、なんだかとても嬉しかったことを覚えている。特異なキャラクターがウイスキーの世界に入り込むことをこころから歓迎した。
遅咲きである。人には言えない苦労もあったことであろう。それでも彼は着実にウイスキーの道を歩みつづけた。
後書きにもあるが、幸せだったのは、ウイスキーを人に伝える職業に出会ったことだろう。人にウイスキーの楽しさを伝える職種に興味を持ってしまった、と述べている。そして「ウイスキーは友人のようなもの」と言う。
先述したように彼が伝えておきたいウイスキーの基礎的な情報が丁寧にしっかりと語られ、さらにはバーに行きたくなる本でもある。
シリーズで山崎蒸溜所100周年記念記事を掲載(関連記事参照)してきているが、日本のウイスキー100年の祝いの年に絶妙のタイミングで刊行された。
この一冊から、また新たなウイスキーファンが生まれることをこころから願う。
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